奪ってみてよ、先輩。

25mlのめすふらすこ

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10.お買い物に行きました。

10-7

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「ここで大丈夫です。ありがとうございました。」

乗る時と同じ場所で降ろしてもらい、初雪さんを乗せた氷榁家の車が見えなくなるまで見送る。
そして。

マンションの5階。すっかり慣れた帰り道。仏頂面で玄関の扉を開く。

「あずき先輩!!!!」

ソファでくつろぐその姿を見るなり私は叫ぶ。

「よー。おかえり。」
「よくもやってくれましたね!?」

激高する私を見上げる先輩に悪びれる様子は無い。

「初雪さんにバレたらどうしてくれたんですか!!」
「なんだ、バレなかったんだ」

バレてほしかったの!?

「最低にも程がありますよ!! バレたらどうしようって、気が気じゃなかったんですから!! 帰ったら絶対先輩に文句言おうと思ってたんですからね!! 今日という今日は許しませんよ!!」

私がこんなに怒ってるのに、片眉を上げる先輩はまるで反省する素振りを見せない。それどころか得意気すら感じる。

「へーえ? つまり、今日一日初雪と一緒にいながら俺の事考えてたワケだ?」
「なんでそうなるんですか!!」

語弊がありすぎるよ!!

「千夜子」

そんな優しく呼んだってね、許すとかないからね!!
不機嫌極まりない私を抱き上げ、いつものように膝の上に乗せる先輩。綺麗な顔と向かい合うのにも、慣れてきた。

顔は本当に綺麗なんだよな。初雪さんの顔を整っているとは思うけど、綺麗とかそういうのは違う。
あずき先輩の顔は、綺麗。線が細いから、かな。スっと通った鼻筋とか、切れ長の目とか。でも二重なんだ。睫毛も長い。

この人はこの顔で女の子に産まれてもモテただろうなぁ。可愛いより、カッコいい女子って感じで。

「なに?」
「文句の一つでもつけてやろうと思いましたけど、文句のつけようがない顔で悩んでます。」
「そりゃどーも。」
「……」
「……」

そっと唇が触れるだけのキス。そんなキスをされたのは初めてで、私は驚くより眉をひそめた。

「先輩?」

呼びかけても、何も言わない。
その表情から、先輩が何を考えているのか分からない。

「……千夜子」
「はい?」
「悪ぃ、ちょっと無理かも」

何が、と聞く前に抱きかかえられて。理解するより早く、私はベッドの上にいた。
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