奪ってみてよ、先輩。

25mlのめすふらすこ

文字の大きさ
上 下
10 / 52
2.初めて、でした。

2-3

しおりを挟む
ドライヤーを置くと、私の後にシャワーを浴びに行った紅先輩が部屋に戻ってきた。濡れた髪に上半身裸のままだし、これが男の人の色気か……って、

「っ!!」

思わず視線を逸らした私に、紅先輩は「ふぅん?」と意地の悪い笑顔を見せた。

「かわいー反応すんじゃん。」
「いや、あの」

たしかに父親の半裸も見たことないからどこに目をやればいいのか分からないのもあるけど、あるけどそうじゃなくて、

ひょいと私を抱えた先輩はそのまま寝室に。ベッドの上に私を下ろすと、その上に覆い被さるようにして私を見下ろすから必然的にそれが目に入ってしまう。

「先輩あの、それは入れてるんですよね……?」

一瞬なんの事か分からない、という顔をした先輩は自分の身体を見て、納得したように「ああ」と一言。

「入れてるよ。」

私が言ってるのは、左肩から腕にかけて入れられたタトゥーの話。手の甲にあるのは分かってたけど……。

「ビビった?」
「まぁ、少し……そんな目にするものでもないので」

最近はファッションの一部として取り入れられてるものでもあるし、否定的な意見はしない。
入れるかどうかは先輩の自由で、私がとやかく言うものじゃないし。

「なぁ」

私を見下ろしたまま、先輩がふいに言った。
「なんで逃げなかった?」

それは、私も考えていたことだった。気だるそうな両眼を少し見つめ、私は苦笑する。

「逃げようとしたら、逃がしてくれました?」
「いーや? でもその気がなきゃ抵抗くらいするだろ。俺としちゃあ話が早くていーけどな。あんまりあっさりしてるもんだから、馬鹿なのかと思ってたぜ?」
「そうかもしれません」

多分私は、自分が思ってる以上に自分のことがどうでもいいんだと思う。
今だって初雪さんに対して多少の罪悪感があれど、やっぱり逃げ出そうとは思えない。

先輩の長い指がつっと私の頬をなぞる。
見上げれば、先輩はその整った顔に妖艶な笑みを浮かべ。

「んな不安そうな顔すんなって。悪いようにはしねぇつったろ?」

不安そうな顔を私はしていたのだろうか。
いや、そもそもこの状況で不安にならない女の子っている?

「ひゃっ」

どうしていいか分からないでいると、太ももを大きな手が這う。
びくりと身体が震え、顔が熱くなるのを感じた。動揺する私に先輩が低く笑う。

「優しくしてやるよ、千夜子ちゃん?」

今初めて、私はここに来たことを後悔していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

最愛の彼

詩織
恋愛
部長の愛人がバレてた。 彼の言うとおりに従ってるうちに私の中で気持ちが揺れ動く

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

処理中です...