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1.出会ってしまいました。
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「え、あの」
「おねーさんさァ」
気だるげに声をかけられる。
「うちの高校の人でしょ?」
え、とその顔を見れば再び視線がぶつかって。
すぐに誤魔化せばよかったものを、私はまじまじと先輩の顔を見てしまう。
切れ長の瞳はやっぱりどこか気だるそうで。闇色の瞳がジトっと私を見据えてる。
鼻筋はすっとしていて、輪郭は細いのに男らしさを感じさせる。
なるほど、これだけの美形なら女遊びもし放題……じゃなくて。
「……離していただけますか?」
務めて冷静に私は返す。正直心臓はバクバクだしお腹の辺りがヒヤッとしてる。
なんで分かるの? 新入生も把握してるの? なんのメリットがあって?
「知ってるっしょ? うちの高校がバイト禁止な事くらい」
「……」
分かってるよ、分かってるけど。そんな、派手な頭髪の人に校則を咎められても……
「やめなよ亜主樹。怖がってるよ?」
甘い声で助け舟を出してくれたのは、栗生先輩。
サラッサラの金髪とたれ目がちな両眼の甘い顔。こちらも紅先輩に劣らずの美形。
「ごめんね? お仕事中なのに。」
栗生先輩は困ったようににこっと微笑むと、「亜主樹」と紅先輩を咎める。
仕方なく、といったように紅先輩は私の手を離した。スタッフとして再び一礼して、今度こそ私はレジ奥へ逃げる。この際戻るより逃げると言った方が正しい。
「ちよちゃんどうかした?」
先輩スタッフの東海林さんが私の様子を見て声をかける。ここは小さな喫茶店。今日のホール担当は私と東海林さんしかいない。
「あの人たちに私が学校に内緒でバイトしてるのバレちゃったみたいで……」
私が言うと東海林さんはチラッと先輩たちの席を見て。
「なるほどね。いいよ、あの席私が担当するから、ちよちゃん私の方やってくれる?」
「ありがとうございます。」
東海林さんは私の一つ上の人で、高校は違うから心配はないだろう。
不安が消えたわけじゃないけど、とりあえずのところ安心する。
同じ高校って知ってても、私の名前までは知らないはず。逆に知ってたら怖い。
八地家はそこそこのお金持ちではあるけど、名の知れた大企業でも財閥でもないから。
「おねーさんさァ」
気だるげに声をかけられる。
「うちの高校の人でしょ?」
え、とその顔を見れば再び視線がぶつかって。
すぐに誤魔化せばよかったものを、私はまじまじと先輩の顔を見てしまう。
切れ長の瞳はやっぱりどこか気だるそうで。闇色の瞳がジトっと私を見据えてる。
鼻筋はすっとしていて、輪郭は細いのに男らしさを感じさせる。
なるほど、これだけの美形なら女遊びもし放題……じゃなくて。
「……離していただけますか?」
務めて冷静に私は返す。正直心臓はバクバクだしお腹の辺りがヒヤッとしてる。
なんで分かるの? 新入生も把握してるの? なんのメリットがあって?
「知ってるっしょ? うちの高校がバイト禁止な事くらい」
「……」
分かってるよ、分かってるけど。そんな、派手な頭髪の人に校則を咎められても……
「やめなよ亜主樹。怖がってるよ?」
甘い声で助け舟を出してくれたのは、栗生先輩。
サラッサラの金髪とたれ目がちな両眼の甘い顔。こちらも紅先輩に劣らずの美形。
「ごめんね? お仕事中なのに。」
栗生先輩は困ったようににこっと微笑むと、「亜主樹」と紅先輩を咎める。
仕方なく、といったように紅先輩は私の手を離した。スタッフとして再び一礼して、今度こそ私はレジ奥へ逃げる。この際戻るより逃げると言った方が正しい。
「ちよちゃんどうかした?」
先輩スタッフの東海林さんが私の様子を見て声をかける。ここは小さな喫茶店。今日のホール担当は私と東海林さんしかいない。
「あの人たちに私が学校に内緒でバイトしてるのバレちゃったみたいで……」
私が言うと東海林さんはチラッと先輩たちの席を見て。
「なるほどね。いいよ、あの席私が担当するから、ちよちゃん私の方やってくれる?」
「ありがとうございます。」
東海林さんは私の一つ上の人で、高校は違うから心配はないだろう。
不安が消えたわけじゃないけど、とりあえずのところ安心する。
同じ高校って知ってても、私の名前までは知らないはず。逆に知ってたら怖い。
八地家はそこそこのお金持ちではあるけど、名の知れた大企業でも財閥でもないから。
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