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第1章*とんでもない専属メイド初日

8・晩餐会ってなんだっけ?

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 18禁乙女ゲーム『MRL』
 このゲームは、いわゆる同時攻略が可能だった。
 3人の攻略対象の好感度を同時にMAXにした時に発生する、3Pならぬ4Pの女王ルートなるものが存在する。

 3人の男を手玉にとり、国までも支配する。というエンディングだ。
 
(いやほんと、あの主人公はすごかった)
 
 彼女の向上心は尊敬に値する。
 だけれど、一歩間違えればその立場に自分がなるかもしれないと思うと苦笑いしか出来なかった。

 あの展開だけは、ごめんこうむりたい。
 
 なんというか……あの末路だけは嫌だ。


  ****


 大広間に着くと、既に晩餐会は始まっていた。
 マクシミリアンに続いて中に入る。
 
「殿下は……まだ来られていないようですね」

「……ですね」

 マクシミリアンが広間内をぐるりと見渡すのにルーナもならう。
 さざめく色とりどりのドレスの中に、パーフェクトプリンス、ハイリの姿は見当たらない。

 その時入口の扉が開き、周囲が途端に色めきたった。「きゃあ」っと、黄色い声があがる。

 パーフェクトプリンス様のご登場だ。

「やぁ、みんな。今日も可愛いね」

 王子は軽やかな足取りで女性陣の間を歩く。
 キラキラとした笑顔を振りまくその様は、まるで前世で見たアイドルのようだ。

(う、うわぁ……)

 もう、見事としか言い様がない。
 隙のない笑顔。
 隙を見せない笑顔。

 どうしてそれを見て、周りの令嬢方は頬を赤らめることができるのだろうか。

 彼の本当の笑顔はあれじゃないのに。

(ほんとは、もっと、無邪気で可愛くて……)

 スチルで、ゲーム画面で見た、彼の本当の笑顔は。

「……どうかされました? 殿下のあまりの変わりように驚いてます?」

 王子のことをじっと見ていたせいだろうか。
 マクシミリアンが少し気遣う調子でぼそりと尋ねてくる。
  ルーナはそれに、小さく首を横に振った。

「……いえ、大丈夫です」

(私は知ってる)

 何もかも。知っている。
 それほどまでに、前世でこのゲームをやりこんでいたのだから。

 表情を変えることなくはっきりと答えたルーナに、マクシミリアンは目をわずかに見開いた。


 ひと通り挨拶が終わると本格的に“晩餐会”が始まった。
 表向きには晩餐会ということになっているが、これは実質お見合いパーティーのようなものだ。
 参加者は年頃の男女のみ。
 ただし、ほとんどのご令嬢は王子に群がっている。

 夕飯は……。

(誰も食べないのね!! 見事!)

 何が“晩餐会”だ!
 と、声を大にして言いたい。
 前世では、ゲーム画面を前によく突っ込んだものだ。

(懐かしい……)

 つい遠い目をしてしまう。
 少し離れた位置にいる王子は、相も変わらず薄っぺらい笑みを貼り付けていた。

 と、ぼんやり眺めていると、不意に肩を叩かれる。

「?」

「メイドさん、可愛いね。どこの専属?」

(……だれ?)

 横に立っていたのは、身なりのいい青年だった。
 このパーティーに参加しているのだから、どこかの貴族なのだろう。
 
(……こんな展開、ゲームにあったっけ?)

 
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