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今日は義姉のイザベラの婚約者が我が家を訪れる予定だ。
子爵家の三男であるマルケスは、とにかく女癖が悪いことで有名なクズ男だ。女であればたとえ使用人であっても見境いなく手を出して来る最低な野郎なので、我が家のメイド一同から蛇蝎の如く嫌われている。
だからこの男が来る日は、誰も担当になりたがらない。よってくじ引きで担当を決めていたが、今日の担当に決まってしまったのはサラだった。ガックリと項垂れてしまったサラを見かねて、
「サラ、私が代わるよ」
「そんなお嬢様! いけません! お嬢様の身に何かあったら!」
「大丈夫。任せておいて。何かされたら10倍にして返してやるから」
「お嬢様...」
そしてクズ男がやって来た。
◇◇◇
私は応接室にクズ男を案内した。体中に舐めるような視線を感じて気持ち悪い。
「こちらでお待ち下さい。只今、お嬢様をお呼び致しますので」
「まあ待て。見ない顔だな。新入りか? もっと近くに寄れ」
早速手を掴んできやがった。
「あ、なにをなさいます。放して下さいませ」
「なかなか良い女じゃないか。どれどれ、ちょっと味見してやろう」
抱き寄せようとするのを思い切りはね除けた。
「うぉぉっ!」
だらしなく床に転がる最低男を見下ろしながら、
「キャアアアッ!」
と、力の限り叫んだ。
「何事ですか!?」
血相を変えて義母と義姉が部屋に飛び込んで来た。
「こ、この人が私に嫌らしいことをしようと!」
「なんですって!?」
「マルケス、本当なの!?」
「ち、違う! ご、誤解だ! こ、この女が俺を誘って来たんだ!」
「私、そんなことしてません!」
「だ、黙れ! 使用人風情が!」
「私、使用人じゃありません! この家の次女のアリスです!」
「な、なんだって!? ど、どういうことだ!?」
「あなたが我が家を訪れる度、使用人にセクハラを働いていると聞いて入れ替わっていたんです! お義母様、お義姉様、こんなセクハラ男との婚約なんて破棄すべきですよ!」
「そ、そうね。それがいいかも知れないわね...」
「見損なったわ、マルケス。あんたなんかと婚約なんてするんじゃなかった! もう二度と顔も見たくないわ!」
「そ、そんなぁ...」
セクハラ男はとぼとぼと帰って行った。いい気味だ。これから社交界に噂が広まって、もうまともな相手は見付からないだろう。
それは義姉にも言える。傷物になったのだから。こっちもまともな縁談は来ないだろう。このまま行き遅れてしまえばいいんだ。ザマアミロ。いい様だ。
子爵家の三男であるマルケスは、とにかく女癖が悪いことで有名なクズ男だ。女であればたとえ使用人であっても見境いなく手を出して来る最低な野郎なので、我が家のメイド一同から蛇蝎の如く嫌われている。
だからこの男が来る日は、誰も担当になりたがらない。よってくじ引きで担当を決めていたが、今日の担当に決まってしまったのはサラだった。ガックリと項垂れてしまったサラを見かねて、
「サラ、私が代わるよ」
「そんなお嬢様! いけません! お嬢様の身に何かあったら!」
「大丈夫。任せておいて。何かされたら10倍にして返してやるから」
「お嬢様...」
そしてクズ男がやって来た。
◇◇◇
私は応接室にクズ男を案内した。体中に舐めるような視線を感じて気持ち悪い。
「こちらでお待ち下さい。只今、お嬢様をお呼び致しますので」
「まあ待て。見ない顔だな。新入りか? もっと近くに寄れ」
早速手を掴んできやがった。
「あ、なにをなさいます。放して下さいませ」
「なかなか良い女じゃないか。どれどれ、ちょっと味見してやろう」
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だらしなく床に転がる最低男を見下ろしながら、
「キャアアアッ!」
と、力の限り叫んだ。
「何事ですか!?」
血相を変えて義母と義姉が部屋に飛び込んで来た。
「こ、この人が私に嫌らしいことをしようと!」
「なんですって!?」
「マルケス、本当なの!?」
「ち、違う! ご、誤解だ! こ、この女が俺を誘って来たんだ!」
「私、そんなことしてません!」
「だ、黙れ! 使用人風情が!」
「私、使用人じゃありません! この家の次女のアリスです!」
「な、なんだって!? ど、どういうことだ!?」
「あなたが我が家を訪れる度、使用人にセクハラを働いていると聞いて入れ替わっていたんです! お義母様、お義姉様、こんなセクハラ男との婚約なんて破棄すべきですよ!」
「そ、そうね。それがいいかも知れないわね...」
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「そ、そんなぁ...」
セクハラ男はとぼとぼと帰って行った。いい気味だ。これから社交界に噂が広まって、もうまともな相手は見付からないだろう。
それは義姉にも言える。傷物になったのだから。こっちもまともな縁談は来ないだろう。このまま行き遅れてしまえばいいんだ。ザマアミロ。いい様だ。
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