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「ハックション!」

 その頃、アマンダは盛大にくしゃみしていた。

「グシュグシュ...ズビズビ...いやぁねぇ...誰か私のこと噂でもしてんのかしら...」

 まさにその通りで、愛娘にサキュバス以上の魅了の持ち主であると噂されていたのである。

「さてと、そろそろ目を覚ましていてもおかしくない頃合いよね」

 アマンダは医務室に向かっていた。二人っきりのところを邪魔するようで申し訳ないが、クラウドの容態を確認しておく必要がある。

「失礼しますよ~...」

 医務室のドアをそっと開ける。すると、抱き合ってキスを交わしていたリリアナとクラウドがサッと離れた。

「あらあらあらぁ~♪ まぁまぁまぁ~♪ お邪魔しちゃったみたいで申し訳ありません~♪」

 アマンダは全く悪びれる様子もなく、とても良い笑顔を浮かべながら部屋に入って来た。

「そろそろクラウド殿下がお目覚めになったかなぁ? って思いましてぇ~♪ 容態が気になったんで来てみた訳なんですがぁ~♪ どうやら色んな意味でお元気になられたみたいでぇ~♪ 安心しましたよぉ~♪」

 ここぞとばかりに煽るアマンダに、二人は熟れたトマトのような真っ赤な顔になってしまった。

「わ、私はちょっと席を外しますね! お、おば様、クラウド殿下のことをよろしくお願いします!」

 叫ぶようにそう言ったかと思うと、リリアナは矢のような速さで部屋を出て行った。一人残されたクラウドは、真っ赤な顔のまま俯いてしまった。

「あらあらぁ~♪ 別に出て行かなくても良かったのにぃ~♪ それじゃクラウド殿下ぁ~♪ 診断をしましょうかねぇ~♪」

「よ、よろしく...」

 テンションの上がったアマンダを前に、クラウドはそう言うだけで精一杯だった。


◇◇◇


「あれ? リリアナ?」

 リリアナは部屋を出た勢いのまま中庭に飛び出した。するとそこには、ケルベロスのポチを散歩させているマリウスの姿があった。

「あ、マリウス殿下...」

「どうしたんだ? 顔が真っ赤だぞ?」

「い、いやこれは...な、なんでもありませんぞよ...」

 まさか、目を覚ましたクラウドと抱き合ってキスしていたところを、アマンダに見られたからなんて言えるはずもない。なんとか誤魔化そうとしたら変な語尾になった。

「兄上に付いてるんじゃなかったのか?」

「え、えぇ...そうだったんですけど...クラウド殿下が目を覚まされましてね...今はおば様が容態を確認しているところです...だから私は、邪魔しちゃいけないと思って外に出ました...」

「そうか。兄上が早く回復してくれるといいな」

「え、えぇ、そうですね...」

 純粋にクラウドのことを心配している様子のマリウスに対し、リリアナはなんだか申し訳ない気持ちになってしまった。

 
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