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「ミランダ嬢~!」
南の砦に到着したミランダを、指揮官であるライリーが直接出迎えた。
「おじ様、リリアナの具合は?」
挨拶もそこそこにミランダは確認を求める。
「あぁ、昨日ようやく目を覚ました! これも全ては、カーミラを倒してくれた君のお陰だな! 本当にありがとう!」
「それはなによりでした...」
ミランダはホッと胸を撫で下ろした。
「リリアナに会えますか?」
「あぁ、部屋に...いや違った。食堂に案内しよう」
「フフフッ! 起きたら起きたで早速、リリアナは本領を発揮してるみたいですね。安心しました」
「そんなところだ」
ライリーの言葉で全てを察したミランダは、苦笑しながら食堂に向かった。道すがら、王都で起こったことを掻い摘まんでライリーに説明すると、
「そうか...クラウド殿下はまだ目を覚まさないのか...」
さっきまでの喜びの表情とは打って変わって、途端に心配げな表情になった。
「えぇ、だからリリアナも、もしかしたらまだ目を覚ましていないんじゃないかと思って、こうして駆け付けて来た訳なんですよ」
「そうだったのか...いや、迷惑ばかり掛けてしまって本当に申し訳ない...それと、心配してくれてありがとう...」
「どういたしまして。リリアナだけでも元気になってくれたのは本当に良かったですよ」
◇◇◇
「ハグ...モグ...ング...」
ミランダ達が食堂に着くと、テーブルに所狭しと並べられた料理の数々を、幸せそうな顔をして頬張るリリアナ姿があった。
それを見た瞬間、今まで張り詰めていた気が一気に開放されたミランダは、
「リリアナ~!」
泣きじゃくりながら友の名を叫び、リリアナの体を思いっきり抱き締めた。
「フゴッ!?」
食事中にいきなり抱き付かれたリリアナは、ビックリして目を丸くしていた。だがそんなことはお構い無しに、ミランダはリリアナの体を力一杯抱き締めながら、
「良かった...本当に良かった...心配したんだからね...このバカ、マヌケ、食いしん坊...」
嗚咽を漏らしながら泣き続けていた。
◇◇◇
「ごめん...ちょっと取り乱しちゃった...」
ややあって、ようやく落ち着いたミランダは、己の行為を思い出して赤面していた。
「ううん...いいのよ...ハグ...それだけ私のことを心配してくれてたってことでしょ?...モグ...ありがとうね...それと...迷惑掛けちゃって本当にごめんなさい...ング...」
殊勝なことを言っているようだが、それでも食事の手を止めない辺りはさすがリリアナといったところだろうか。
ライリーはそんな娘の姿を見て、呆れたように首を振っているが、ミランダは微笑ましいものを見るような目で見守っていた。
南の砦に到着したミランダを、指揮官であるライリーが直接出迎えた。
「おじ様、リリアナの具合は?」
挨拶もそこそこにミランダは確認を求める。
「あぁ、昨日ようやく目を覚ました! これも全ては、カーミラを倒してくれた君のお陰だな! 本当にありがとう!」
「それはなによりでした...」
ミランダはホッと胸を撫で下ろした。
「リリアナに会えますか?」
「あぁ、部屋に...いや違った。食堂に案内しよう」
「フフフッ! 起きたら起きたで早速、リリアナは本領を発揮してるみたいですね。安心しました」
「そんなところだ」
ライリーの言葉で全てを察したミランダは、苦笑しながら食堂に向かった。道すがら、王都で起こったことを掻い摘まんでライリーに説明すると、
「そうか...クラウド殿下はまだ目を覚まさないのか...」
さっきまでの喜びの表情とは打って変わって、途端に心配げな表情になった。
「えぇ、だからリリアナも、もしかしたらまだ目を覚ましていないんじゃないかと思って、こうして駆け付けて来た訳なんですよ」
「そうだったのか...いや、迷惑ばかり掛けてしまって本当に申し訳ない...それと、心配してくれてありがとう...」
「どういたしまして。リリアナだけでも元気になってくれたのは本当に良かったですよ」
◇◇◇
「ハグ...モグ...ング...」
ミランダ達が食堂に着くと、テーブルに所狭しと並べられた料理の数々を、幸せそうな顔をして頬張るリリアナ姿があった。
それを見た瞬間、今まで張り詰めていた気が一気に開放されたミランダは、
「リリアナ~!」
泣きじゃくりながら友の名を叫び、リリアナの体を思いっきり抱き締めた。
「フゴッ!?」
食事中にいきなり抱き付かれたリリアナは、ビックリして目を丸くしていた。だがそんなことはお構い無しに、ミランダはリリアナの体を力一杯抱き締めながら、
「良かった...本当に良かった...心配したんだからね...このバカ、マヌケ、食いしん坊...」
嗚咽を漏らしながら泣き続けていた。
◇◇◇
「ごめん...ちょっと取り乱しちゃった...」
ややあって、ようやく落ち着いたミランダは、己の行為を思い出して赤面していた。
「ううん...いいのよ...ハグ...それだけ私のことを心配してくれてたってことでしょ?...モグ...ありがとうね...それと...迷惑掛けちゃって本当にごめんなさい...ング...」
殊勝なことを言っているようだが、それでも食事の手を止めない辺りはさすがリリアナといったところだろうか。
ライリーはそんな娘の姿を見て、呆れたように首を振っているが、ミランダは微笑ましいものを見るような目で見守っていた。
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