110 / 133
110
しおりを挟む
「待て! そうなると、カーミラの手駒が王宮内に潜入していたってことになるのか!?」
事態の深刻さに気付いたリヒャルトが真っ青になる。
「えぇ、もしかしたらカーミラ自身が」
「な、なんということだ...みすみす敵の潜入を許すとは...」
リヒャルトは頭を抱えた。
「あ、そう言えば...」
なにかに気付いたマリウスがおとがいに指を当てる。
「どうした? マリウス?」
「兄上の側付きのメイドが代わっていたように思います。確か以前は黒髪のメイドだったはずなのに、ここ最近は金髪のメイドになっていました」
「あ、確かに...」
そう言われてミランダも思い出したようだ。そして口唇を噛んだ。メイドの顔をしっかりと見ていなかったからだ。
もしあれがカーミラだったとしたら、いくら金髪のカツラを被っていたとしても、顔をちゃんと見ていれば気付けたはずだ。
「あぁ、それはきっと式典の準備のために増員された者かも知れないな...」
リヒャルトはそう推測した。
「ちょっとよろしいですか、国王陛下?」
ミランダが手を上げた。
「うん?」
「仮にも王宮に勤めるとなれば、身元が確かな者しか雇わないはずですよね?」
「もちろんだ。貴族家からの紹介状が無ければ雇うことはしない」
「紹介状...そんなものを一体どこから?...」
ミランダは考え込んだ。
「ふ~む...」
マリウスも首を捻った。実際は、カーミラに操られたリリアナが書いたものなのだが、さすがにそこまでは思考が辿り着かなかった。
「何はともあれ...ミランダ嬢、魔道士常駐の件は承知した。すぐに手配するとしよう。貴重なご意見感謝する」
「どういたしまして」
「では儂はクラウドの様子を見て来るとしよう。二人とも本当にご苦労だった」
そう言ってリヒャルトは去って行った。残されたミランダとマリウスの二人は、なんとも言えない複雑な表情を浮かべていた。
「さてと...俺も片付けを手伝うとするかな...」
やがてマリウスは、未だに沢山の人々が右往左往している広場前を見渡しながらそう言った。
「あ、マリウス殿下。私も手伝いますよ」
すかさずミランダが同調する。
「ミランダ、大丈夫か? カーミラと戦って疲れてないか?」
マリウスはミランダを気遣かった。
「私は大丈夫です。マリウス殿下の方こそ大丈夫ですか? ボロボロになってますけど?」
「なあに、このくらい軽いもんさ。なにせ北の砦で散々鍛え上げられたからな」
そう言って苦笑いを浮かべるマリウスの姿を、ミランダは眩しげに見詰めていた。
事態の深刻さに気付いたリヒャルトが真っ青になる。
「えぇ、もしかしたらカーミラ自身が」
「な、なんということだ...みすみす敵の潜入を許すとは...」
リヒャルトは頭を抱えた。
「あ、そう言えば...」
なにかに気付いたマリウスがおとがいに指を当てる。
「どうした? マリウス?」
「兄上の側付きのメイドが代わっていたように思います。確か以前は黒髪のメイドだったはずなのに、ここ最近は金髪のメイドになっていました」
「あ、確かに...」
そう言われてミランダも思い出したようだ。そして口唇を噛んだ。メイドの顔をしっかりと見ていなかったからだ。
もしあれがカーミラだったとしたら、いくら金髪のカツラを被っていたとしても、顔をちゃんと見ていれば気付けたはずだ。
「あぁ、それはきっと式典の準備のために増員された者かも知れないな...」
リヒャルトはそう推測した。
「ちょっとよろしいですか、国王陛下?」
ミランダが手を上げた。
「うん?」
「仮にも王宮に勤めるとなれば、身元が確かな者しか雇わないはずですよね?」
「もちろんだ。貴族家からの紹介状が無ければ雇うことはしない」
「紹介状...そんなものを一体どこから?...」
ミランダは考え込んだ。
「ふ~む...」
マリウスも首を捻った。実際は、カーミラに操られたリリアナが書いたものなのだが、さすがにそこまでは思考が辿り着かなかった。
「何はともあれ...ミランダ嬢、魔道士常駐の件は承知した。すぐに手配するとしよう。貴重なご意見感謝する」
「どういたしまして」
「では儂はクラウドの様子を見て来るとしよう。二人とも本当にご苦労だった」
そう言ってリヒャルトは去って行った。残されたミランダとマリウスの二人は、なんとも言えない複雑な表情を浮かべていた。
「さてと...俺も片付けを手伝うとするかな...」
やがてマリウスは、未だに沢山の人々が右往左往している広場前を見渡しながらそう言った。
「あ、マリウス殿下。私も手伝いますよ」
すかさずミランダが同調する。
「ミランダ、大丈夫か? カーミラと戦って疲れてないか?」
マリウスはミランダを気遣かった。
「私は大丈夫です。マリウス殿下の方こそ大丈夫ですか? ボロボロになってますけど?」
「なあに、このくらい軽いもんさ。なにせ北の砦で散々鍛え上げられたからな」
そう言って苦笑いを浮かべるマリウスの姿を、ミランダは眩しげに見詰めていた。
11
お気に入りに追加
2,335
あなたにおすすめの小説

(短編)いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?
公爵令嬢のRe.START
鮨海
ファンタジー
絶大な権力を持ち社交界を牛耳ってきたアドネス公爵家。その一人娘であるフェリシア公爵令嬢は第二王子であるライオルと婚約を結んでいたが、あるとき異世界からの聖女の登場により、フェリシアの生活は一変してしまう。
自分より聖女を優先する家族に婚約者、フェリシアは聖女に嫉妬し傷つきながらも懸命にどうにかこの状況を打破しようとするが、あるとき王子の婚約破棄を聞き、フェリシアは公爵家を出ることを決意した。
捕まってしまわないようにするため、途中王城の宝物庫に入ったフェリシアは運命を変える出会いをする。
契約を交わしたフェリシアによる第二の人生が幕を開ける。
※ファンタジーがメインの作品です
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ
ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる