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「おい、マリウス! 一体どうなってる? 状況は?」
そこに国王リヒャルトが駆け付けて来た。
「あぁ、父上。ご覧の通りですよ。なんとか片が付きました」
マリウスはちょっとだけ誇らしげにそう語ったのだが、
「バカ者! 国王陛下と呼ばんか! 公式の場であるぞ!」
いつものようにダメ出しされていた。
「失礼致しました、国王陛下。事態はどうにか収束しましたのでご安心ください」
「そうか...マリウス、良くやってくれた。礼を言うぞ?」
「いえいえ、私めの功績なぞ微々たるものでございますよ。最大の功労者は、全ての元凶であるカーミラを倒してくれたこのミランダになります故」
そう言ってマリウスはミランダの方に視線を向けた。
「あぁ、なるほど...そういうことか...ミランダ嬢、本当に良くやってくれた。国を代表してお礼を言わせて貰おう。ありがとう」
「そんな...国王陛下、勿体ないお言葉でございます」
ミランダは軽くカーテーシーをしてリヒャルトの礼に応えた。
「おいマリウス、クラウドのヤツはどうなった?」
リヒャルトは辺りを見渡してクラウドの姿が無いことに気付いた。
「兄上は意識を失くしていたので医務室に運びました」
「そうか...無事...なんだよな?」
リヒャルトの言葉は、最後の方が少々不安げな口調になっていた。
「えぇ、体の方はなんともありませんでした」
「...心の方は?」
リヒャルトはますます不安げな口調になった。
「大丈夫だと思います。今は魅了の力を強く浴びたせいで、一時的に意識喪失状態になっているだけだと思われます。時間が経てば元に戻るはずですよ?」
マリウスに代わってミランダがそう答えた。
「そうか...そうか...」
リヒャルトはホッと胸を撫で下ろした。
「国王陛下、僭越ながら申し上げます」
そこでミランダは急に改まった口調になった。
「なにか?」
「魅了対策として王宮内に魔道士を常駐させるべきです。具体的には、王族の方々にお出しする料理や飲み物に対するチェックですね」
「な、なんだと!? じゃ、じゃあ、もしかして...クラウドがあれほど魅了の力の影響を受けたのは、普段の食事等に魅了の力が掛かっていたと!?」
リヒャルトは目を剥いた。
「えぇ、その可能性は大いにあると思っています。実際にカーミラは、メイド喫茶でそういった手法を用いていたみたいですし」
「な、なんということだ...」
リヒャルトは頭を抱えた。
「私もうっかりしていました。今にして思えば、カーミラの魔力を検知することばっかりに気を取られ、飲食物のチェックまで気が回らなかったです」
そこに国王リヒャルトが駆け付けて来た。
「あぁ、父上。ご覧の通りですよ。なんとか片が付きました」
マリウスはちょっとだけ誇らしげにそう語ったのだが、
「バカ者! 国王陛下と呼ばんか! 公式の場であるぞ!」
いつものようにダメ出しされていた。
「失礼致しました、国王陛下。事態はどうにか収束しましたのでご安心ください」
「そうか...マリウス、良くやってくれた。礼を言うぞ?」
「いえいえ、私めの功績なぞ微々たるものでございますよ。最大の功労者は、全ての元凶であるカーミラを倒してくれたこのミランダになります故」
そう言ってマリウスはミランダの方に視線を向けた。
「あぁ、なるほど...そういうことか...ミランダ嬢、本当に良くやってくれた。国を代表してお礼を言わせて貰おう。ありがとう」
「そんな...国王陛下、勿体ないお言葉でございます」
ミランダは軽くカーテーシーをしてリヒャルトの礼に応えた。
「おいマリウス、クラウドのヤツはどうなった?」
リヒャルトは辺りを見渡してクラウドの姿が無いことに気付いた。
「兄上は意識を失くしていたので医務室に運びました」
「そうか...無事...なんだよな?」
リヒャルトの言葉は、最後の方が少々不安げな口調になっていた。
「えぇ、体の方はなんともありませんでした」
「...心の方は?」
リヒャルトはますます不安げな口調になった。
「大丈夫だと思います。今は魅了の力を強く浴びたせいで、一時的に意識喪失状態になっているだけだと思われます。時間が経てば元に戻るはずですよ?」
マリウスに代わってミランダがそう答えた。
「そうか...そうか...」
リヒャルトはホッと胸を撫で下ろした。
「国王陛下、僭越ながら申し上げます」
そこでミランダは急に改まった口調になった。
「なにか?」
「魅了対策として王宮内に魔道士を常駐させるべきです。具体的には、王族の方々にお出しする料理や飲み物に対するチェックですね」
「な、なんだと!? じゃ、じゃあ、もしかして...クラウドがあれほど魅了の力の影響を受けたのは、普段の食事等に魅了の力が掛かっていたと!?」
リヒャルトは目を剥いた。
「えぇ、その可能性は大いにあると思っています。実際にカーミラは、メイド喫茶でそういった手法を用いていたみたいですし」
「な、なんということだ...」
リヒャルトは頭を抱えた。
「私もうっかりしていました。今にして思えば、カーミラの魔力を検知することばっかりに気を取られ、飲食物のチェックまで気が回らなかったです」
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