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「見付かりませんね...」

「あぁ...徒労に終わったな...」

 ミランダとマリウスは揃って疲れた表情を浮かべていた。王宮内のメイド達を全て調べたが、カーミラを見付けることは出来なかったからだ。

「あれ? ウチのママはどうしました?」

 ミランダが首を傾げる。

「アマンダ夫人なら兄上のことが気になるからって言って、途中から兄上の執務室の方に向かって行ったよ」

 マリウスはクラウドの執務室の方を指差しながらそう言った。

「あぁ、なるほど。確かに様子が変でしたもんね」

「兄上は働き過ぎなんだよ...いつか過労死するんじゃないかと本気で心配になる程に...」

 頭を振りながらマリウスはそう述懐した。

「責任感の強いお方ですもんねぇ。もっとも、それくらいじゃないと次期国王の座は務まらないってことなんでしょうか?」

「そうなのかも知れないな...俺にはとても務まりそうもないが...」

 マリウスはやや自嘲気味に遠い目をした。


◇◇◇


 その頃、近衛騎士団長は新たな報告に頭を抱えていた。

「それは本当か?」

「はい...王都の一般都民の間でも原因不明の昏睡患者が増えているそうです...」

「なんてことだ...」

「団長、如何致しましょうか...」

 近衛騎士団長はしばし考え込んだ後、

「...例のメイド喫茶なる店をガサ入れした際に拘留した店員を一人、ここに連れて来い」

「了解致しました」

 程無くして一人の女が連行されて来た。

「ちょっとぉ~! 痛いってばぁ~! 女の子はもっと優しく扱いなさいよねぇ~! そんなんじゃモテないわよぉ~!」

「やかましい。さっさと座れ」

 近衛騎士団長はイライラしながらそう言った。

「名前は...セレナか。お前に聞きたいことがある」

 調書を見ながら近衛騎士団は尋問を始めた。そう、この女はミランダとマリウスがメイド喫茶に初めて訪れた際、担当になったセレナだった。

「だから私はなんにも知らないってぇ! もう散々聞いたじゃないのよぉ~! 何べん同じこと繰り返すつもりよぉ~!」

「王都民の間で昏睡患者が増えつつある。全てお前らの店に足繁く通っていた者ばかりだ。一体なにをしたのか正直に話せ」

「だから知らないってばぁ~! 私達は店長の言う通りに接客してただけなんだってばぁ~!」

「店長とはカーミラのことだな? そのカーミラは行方不明になっている。潜伏場所に心当たりはないか?」

「そんなこと知らないわよ...だって店長ってその...なんかおっかなくて近寄り難い雰囲気だったから...あんまり親しく接してはなかったもの...」

「そうか...」

 どうやら期待外れだったようだ。近衛騎士団長はそっと目を伏せた。
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