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「サキュバス...そうだったのね...迂闊だったわ」

 今、ミランダ達はシオンの背に乗っている。南の砦に急いで戻るためだ。心配しているであろうライリーを一刻も早く安心させてあげたかった。

 その道中、ミランダの説明を受けたリリアナは神妙な顔付きになっていた。

「ミランダ、ごめんなさいね...あなたにもかなり迷惑掛けちゃったみたいで...」

「私の方はもういいわよ。それよりも、おじ様に誠心誠意謝りなさいな。もしかしたら覚えてないかも知れないけど、あなた南の砦の外壁を破壊してるんだからね?」

「うぅぅ...そ、それはなんとなく記憶にあるような...無いような...」

「どっちなのよ...」

「ね、ねぇミランダ...」

「うん?」

「ち、父上は...お、怒ってた?」

「えぇ、そりゃあもう」

「うぅぅ...やっぱし...」

「諦めて怒られなさい」

「うぅぅ...鉄拳制裁はイヤだぁ...」

 リリアナが恐れるのも無理はない。南の砦の猛者どもを束ねているだけあって、ライリーはミランダの父ガストンにも引けを取らない程の筋骨隆々とした偉丈夫だ。リリアナは過酷な制裁を受けるものと予想された。

「ほら、そろそろ南の砦に到着するわよ? 覚悟決めなさい」

「ままま待って待って待って~! ま、まだ心の準備がぁ~!」

「待たない」

 ミランダは無慈悲にそう言って、南の砦にシオンを着地させた。
 

◇◇◇


「こんのバカ娘がぁ~!」

「グエッ!」

 ライリーから頭に拳骨を食らったリリアナは、地面にめり込むんじゃないかってくらいの勢いで倒れ込んだ。そしてそのままピクリとも動かなくなった。

「お、おじ様!? さ、さすがにヤバいんじゃ!?」

 ミランダは慌ててリリアナに駆け寄るが、

「スピ~...zzz...」

 当のリリアナは呑気にイビキを掻いて寝ていた。

「ハァ...ハァ...リリアナ嬢、心配はご無用だ。コイツは殺したって死ぬようなタマじゃないからな...」

 そう言ってライリーは、肩で息をしながら疲れ切った表情を浮かべ苦笑していた。口ではそう言っておきながらも、やっぱり実の娘のことが心配で夜も眠れなかったであろうことがヒシヒシと伝わって来る。

「そうですよね。なんてったってリリアナですもんね」

 ミランダも苦笑で返しながら、夜通し馬を走らせていたリリアナ同様、自分も昨夜はほとんど寝ていないことを思い出した。
 
「おじ様、リリアナはお疲れみたいですし、私も徹夜したんでクタクタです。少し休ませて貰ってもよろしいでしょうか?」

「あぁ、ミランダ嬢。色々と申し訳なかった。部屋を用意するからゆっくり休んでくれ」

「ありがとうございます。おじ様も少し休んでくださいね? かなりお疲れのご様子ですし」

「あぁ、心遣い感謝する」
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