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 一方その頃、ミランダはシオンの背中から身を乗り出しながら、下方を注視してリリアナの姿を探し求めていた。

「シオン、もうちょっとゆっくり飛んで?」

「グオッ!」

 リリアナが街道を走ってくれていたら見付け易いのだが、森の中の獣道を走られたりしたら木々が邪魔をして上空から見付けるのは難しくなる。

 ミランダは目を凝らしながら探索を続けた。

「フゥ...ダメだこりゃ...見辛いな...」

 やがてしばらく経った後、疲れた目を揉み解しながらミランダは、

「シオン、もういいわ。次の宿場町に向かってちょうだい」

 森の中の探索を諦めた。

「グオッ!」

 リリアナが休憩を挟もうとする場合、上手くいけば先回り出来るかも知れない。ミランダはその点に望みを掛けることにした。


◇◇◇


 同時刻、北の砦ではマリウスが訓練に勤しんでいた。

「ほらっ! ほらっ! 早く来いポチッ! 置いてくぞっ!?」

「く、クウォーン...」

 フルアーマーを着こなしたマリウスが、ハードルや水濠を飛越する所謂障害走を軽い足取りで熟している。

 その一方で、付き合わされる形なったケルベロスのポチは既に息が上がっていた。

「殿下、お久し振りです。精が出ますね?」

 そこにガストンとの話を終えたアマンダが様子を見にやって来た。

「やぁ、アマンダ夫人。しばらく」

 マリウスは汗を拭きながら爽やかに挨拶を交わす。

「随分と逞しくおなりになられましたね」

 そんなマリウスの姿にアマンダは目を細めた。

「ははっ...今までサボりにサボり捲ってた分を、ここに来てかなり鍛えられたからね」

 そう言ってマリウスは恥ずかしそうに微笑んだ。この北の砦で過ごす日々が、マリウスの心と体に成長を促したことは間違いない。

 現にこうやって、久し振りにアマンダの姿を見た後も、以前のように舞い上がったり股間を脹らませたりするようなこともない。極普通に接していられる。

 怠惰な生活を送っている内に溜まった膿のようなものが、厳しく鍛練することによってキレイに発散されたようにも見える。

「それで? 今日はまたなんでこっちに?」

 アマンダは先日の魔王兄弟討伐の際、かなり長い間病院を空けていたことで仕事が溜まり、ここのところはずっと病院に泊まり込んでいたのだった。

「えぇ、実は...」

 アマンダは事の詳細を説明した。

「そんなことになっていたのか...」

 魔族が絡んでいることを初めて知ったマリウスは瞠目した。

「それで今、ミランダは?」

「まだ戻って来ていません。一体どこに行ったのやら...」

「あぁ、それなら想像は付く」

「えっ!? 本当ですか!? 一体どこに!?」

「恐らくは南の砦だ」
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