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「な、なんだこれは!?」

 地下牢に着いたライリーは愕然とした。看守が一人残さず倒され、リリアナを放り込んでおいた牢屋の鉄格子が、有り得ない角度でひしゃげてしまっていたからだ。そしてリリアナの姿はどこにもなかった。

「おいっ! しっかりしろお前ら! 一体なにがあった!? リリアナはどこに行った!?」

「す、すいません...お、お屋形様...お、お嬢様が...お、お嬢様が...」

 看守の一人を抱え上げたライリーだったが、看守はそれだけを言って気を失ってしまった。

「おじ様...あれを...」

 後ろに控えていたミランダが冷静に指を差す。

「な、なんてことだ...」

 その指の先には、大穴を開けた南の砦の外壁があった。

「どうやらここから外に出たみたいですね...」

 ミランダが大穴を覗き込みながらそう言った。

「フゥッ...なんともまぁ化け物じみた真似を...我が娘ながら空恐ろしくなるな...」

 先程のひしゃげた鉄格子しかり、大穴の開いた外壁しかり、とてもじゃないが人力でどうにかなるような代物ではない。脳筋リリアナここに極まれりといったところだろうか。

「おじ様、ファルファルは? リリアナがファルファルに乗って出て行ったとしたら、捕まえるのが大変になりますよ?」

 リリアナを南の砦に戻す際、ファルファルにはリリアナの言うことを聞かないようにと言い付けてはおいたが、所詮はリリアナのペットだ。どこまで言い付けを守れるのか定かではない。

「あぁ、その点は大丈夫だ。今、ファルファルは最前線に配備しているから」

「それなら良かったです」

 ミランダはホッと胸を撫で下ろした。

「しかし困ったな...あのバカ娘は一体どこに向かったのやら...」

「あぁ、それなら十中八九ウチに向かったんだと思います」

「北の砦にか!? ここからどれだけ掛かると思ってんだ!?」

「ファルファルに乗れない以上、馬を飛ばして行くしかないでしょうね。何度か乗り替えたとしても、軽く一週間以上は掛かるんじゃありません?」

 南の砦から北の砦へ向かうということは、要するにこの国を横断するということになる。馬車だと最低でも二ヶ月は掛かる距離だろう。

「そうだな...今から追い掛けたんじゃ捕まえるのは難しいと思うが、取り敢えず追っ手を差し向けるとするか...」

「おじ様、私もこれからウチに戻りますから、飛びながら探してみることにしますよ」

「済まんな...迷惑を掛けるがそうしてくれるか...」 

「あぁ、それとおじ様。クラウド殿下には報告しておいた方が良いと思いますよ?」

「クラウド殿下か...」

 するとライリーは渋い顔をした。

「なにか?」

「実は殿下の立太子の式典への招待状が届いていてな...」

「あぁ、なるほど...いつなんです?」

「二週間後だ...」


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