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「ぎ、ギクゥッ!?」

 魔道士達のその反応が全てだった。

「ハアァァァッ...」

 ミランダは大きなため息を一つ吐いた。どうやら接近禁止令は遅きに失っしたようだった。

「お嬢様!? 何事ですか!?」

 そこに急報を受けた魔道部隊長が駆け付けて来た。

「見ての通りよ。訓練中に事故が発生したわ。この連中を病院に運んで?」

「りょ、了解致しました!」

「部隊長、それとメイド喫茶への接近禁止令を改めて徹底しなさい」

「め、メイド喫茶ですか!?」

「えぇ、そうよ。どうやらこの連中、隠れて通ってたみたいなの。そういった輩は訓練中に集中を欠いたりするのよ。その挙げ句がこの様になるって訳ね」

「な、なるほど! 分かりました! 再徹底させます!」

「お願いね? 私はこのことをパパに知らせてくるから」

 ミランダはそう言い残して訓練場を後にした。


◇◇◇


「パパ? 居る?」

 北の砦の司令官室を訪れたミランダは、ノックもそこそこに中に入った。

「うん!? ミランダか!? どうした!?」

 書類仕事をしていたガストンが顔を上げる。 

「魔道部隊で訓練中に事故が発生したわ」

「なんだと!? 事故の規模は!?」

「怪我人が数名出たけど、幸い何れも軽傷みたいだから安心して? 念のため病院には送るけどね」

「そうか...じゃあ一安心といったところだな...ちなみに原因はなんだったんだ?」
 
「訓練中に集中を欠いたこと。そして事故に遭った連中は漏れなくメイド喫茶に通っていたわ」

「メイド喫茶!? あぁ、お前がこの間言っていたあれか!?」

「えぇ、そうよ。砦の兵士達には接近禁止令を徹底してくれたんでしょ?」

「あぁ、お前に言われた通りにな」

「こっちでは訓練中に事故とか起きていない?」

「今のところは大丈夫だ」

「そう、良かったわ。念のため再徹底しといてくれる?」

「あぁ、分かった」

「お願いね? 私は病院に向かうわ」

 そう言ってミランダは司令官室を後にした。


◇◇◇


「ママ、お疲れ様。連中の具合はどう?」

 病院に着いたミランダは、真っ先に院長であるアマンダに尋ねてみた。

「あぁ、ミランダ。大丈夫よ、怪我は大したことないわ」

「そう、良かったわ」

「体の方はね」

「うん!? それどういう意味!?」

「僅かだけど魅了された痕跡が残ってるのよ」

「魅了...それって...」

「えぇ、魔族が使う魔法ね。主にサキュバスの」

「なるほど...そういうことか...」

「ミランダ、なにか心当たりがあるの?」

「えぇ、実はね...」

 ミランダはメイド喫茶での一件をアマンダに話して聞かせた。
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