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『は、はいぃ~!?』

 次の瞬間、二人の声がキレイにハモッた。

「オーッホホホッ! 貧乏人共、ザマァみさらせ! 世の中、金が全てなのよ~! オーッホホホッ!」

 そんな最低なセリフを吐きながら、まるで悪役令嬢のような高笑いを浮かべているのは、紛う事なき二人の知己であるリリアナその人だった。

「リリアナっ!? あんた一体なにやってんの!? ってか、なんでこんな所に居んのよ!?」

 ミランダは堪らず席から立ち上がってリリアナに詰問する。

「ゲェッ!? み、ミランダっ!? あ、あんたがなんでこの店に!?」

 リリアナはヤベェッて顔に出ている。

「聞いてんのはこっちよ! あんた、自分の仕事ほっぽり出してこんな所でなにしてんのって聞いてんのよ!」

 ミランダはリリアナの方にツカツカと歩み寄りながら詰問を続ける。その剣幕に、騒がしかった店内はいっぺんに静まり返ってしまった。

「え、え~とぉ...そ、そのぉ...」

 リリアナはタジタジになってしまった。目が完全に泳いでいる。

「ちょっと来なさい!」

 ここじゃ店に迷惑が掛かると判断したミランダは、リリアナの首根っこを引っ掴んで店から出そうとする。

「い、イヤァ! イヤよぉ~! せっかく指名料払ったのにぃ~! カーミラちゃ~ん!」

「やかましいわっ!」

 リリアナはまるで駄々を捏ねる子供のように抵抗したが、ミランダは有無を言わせなかった。そのままリリアナを引き摺るようにして、ミランダは足音荒く店を後にした。

「え、え~と...お騒がせして申し訳ない...」

 一人残されたマリウスは、恐縮しながら二人分の飲食代をテーブルの上に置いて、そそくさと店を後にした。

 そんな彼らの姿を、カーミラは怪しげな微笑みを浮かべながら静かに見詰めていた。


◇◇◇


「さて、一体どういうことなのか聞かせて貰おうかしら?」

 今、リリアナは店の外の道路上で正座させられている。その前には仁王立ちしたミランダが睨みを利かせていた。

「え、え~と...そ、そのですね...ど、どこから話せばいいものやら...」

「最初っから始めて終わりまで話せばいいのよ」

 ミランダは至極当然のことを言った。

「え、え~と...は、始まりは...」

 リリアナは順を追って話し始めた。曰く、南の砦のお膝元にある町中で最近、メイド喫茶なる店が流行っているらしく、砦に常駐している兵達の間でも噂になっていた。

 その内、非番の時などに興味本位で店に行ってみようと思う兵達が現れ始めた。するとその兵達はいっぺんでメイド喫茶の虜になってしまった。そしてその数は次第に増えて行った。

 やがて南の砦では訓練中に集中を欠き、怪我をする兵達が続出するようになって行った。
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