62 / 133
62
しおりを挟む
開店早々にも関わらず、店内はほぼ満席状態だ。確かに評判になっているというだけのことはある。
「意外にカップルが多いんだな...」
「えぇ、私達も含めて...それと一人で来ているお客はほとんどが男性ですね...」
「確かに...みんな若そうに見えるから、恐らくは独身男性なんだろうな...」
「店員がみんな若くて可愛い女の子ばっかりですもんね...」
ミランダも店内を見渡し、二人して感想を述べ合っていた。
「なぁ、ちょっと気になったんだが、お嬢様の対義語がご主人様ってあれおかしくないか?」
「あぁ、確かに...それだと親娘になっちゃいますよね? なにが正しいんだろ? 旦那様とかですか?」
「いやそれだと夫婦になっちゃうだろ? お嬢様の対義語って言ったらお坊っちゃまとかになるんじゃないか?」
「なるほど...殿下にはピッタリですね?」
「皮肉はやめてくれないか...」
北の砦に来るまで散々甘やかされて育ったマリウスは、確かにお坊っちゃまだったと言わざるを得ないだろう。
「大変お待たせ致しました~♪ こちらが可愛いメイドがブレンドしたコーヒーLoveLoveキュンキュンスペシャルになりまーす♪」
その時、先ほど応対したセレナという名前の店員がコーヒーを二人分運んで来た。見た目は普通のコーヒーと変わらない。カップに可愛いらしいネコの姿が描かれているのを除いて。
「それでは~♪ これから~♪ コーヒーが美味しくなーる呪文を掛けちゃいますね~♪」
そう言ってセレナはミルクピッチャーを手に取った。
「美味しくなーれ♪ 美味しくなーれ♪ Love♪ Love♪ キュンキュン♪ キャルルルーン♪ チュ♪ チュ♪」
セレナはそんな呪文? を呟きながら、ミルクピッチャーを器用に回し二人のコーヒーに注いで行った。するとコーヒーの表面にミルクでハートマークが浮かび上がった。
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか~? ではでは~♪ ごゆっくりお寛ぎくださいませ~♪ 担当は私、セレナがお届けしました~♪ キュンキュン♪ キャハ♪」
『...』
またしても怒涛のような展開に圧倒された二人は、ただただ無言を貫くのみだった。
◇◇◇
「...普通のコーヒーだよな?...」
「...えぇ、至って普通の...なんの変哲もない...」
それが、セレナの運んで来たコーヒーを飲んだ二人の感想だった。
「...呪文...とか言ってたけど?...」
「...ハハハ...あんな呪文で魔法が掛かるなら、我々魔道士は苦労したりしませんよ...」
ミランダは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
「意外にカップルが多いんだな...」
「えぇ、私達も含めて...それと一人で来ているお客はほとんどが男性ですね...」
「確かに...みんな若そうに見えるから、恐らくは独身男性なんだろうな...」
「店員がみんな若くて可愛い女の子ばっかりですもんね...」
ミランダも店内を見渡し、二人して感想を述べ合っていた。
「なぁ、ちょっと気になったんだが、お嬢様の対義語がご主人様ってあれおかしくないか?」
「あぁ、確かに...それだと親娘になっちゃいますよね? なにが正しいんだろ? 旦那様とかですか?」
「いやそれだと夫婦になっちゃうだろ? お嬢様の対義語って言ったらお坊っちゃまとかになるんじゃないか?」
「なるほど...殿下にはピッタリですね?」
「皮肉はやめてくれないか...」
北の砦に来るまで散々甘やかされて育ったマリウスは、確かにお坊っちゃまだったと言わざるを得ないだろう。
「大変お待たせ致しました~♪ こちらが可愛いメイドがブレンドしたコーヒーLoveLoveキュンキュンスペシャルになりまーす♪」
その時、先ほど応対したセレナという名前の店員がコーヒーを二人分運んで来た。見た目は普通のコーヒーと変わらない。カップに可愛いらしいネコの姿が描かれているのを除いて。
「それでは~♪ これから~♪ コーヒーが美味しくなーる呪文を掛けちゃいますね~♪」
そう言ってセレナはミルクピッチャーを手に取った。
「美味しくなーれ♪ 美味しくなーれ♪ Love♪ Love♪ キュンキュン♪ キャルルルーン♪ チュ♪ チュ♪」
セレナはそんな呪文? を呟きながら、ミルクピッチャーを器用に回し二人のコーヒーに注いで行った。するとコーヒーの表面にミルクでハートマークが浮かび上がった。
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか~? ではでは~♪ ごゆっくりお寛ぎくださいませ~♪ 担当は私、セレナがお届けしました~♪ キュンキュン♪ キャハ♪」
『...』
またしても怒涛のような展開に圧倒された二人は、ただただ無言を貫くのみだった。
◇◇◇
「...普通のコーヒーだよな?...」
「...えぇ、至って普通の...なんの変哲もない...」
それが、セレナの運んで来たコーヒーを飲んだ二人の感想だった。
「...呪文...とか言ってたけど?...」
「...ハハハ...あんな呪文で魔法が掛かるなら、我々魔道士は苦労したりしませんよ...」
ミランダは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
1
お気に入りに追加
2,327
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話
ルジェ*
ファンタジー
婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが───
「は?ふざけんなよ。」
これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。
********
「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください!
*2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
待ち遠しかった卒業パーティー
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アンネットは、暴力を振るう父、母亡き後に父の後妻になった継母からの虐め、嘘をついてアンネットの婚約者である第四王子シューベルを誘惑した異母姉を卒業パーティーを利用して断罪する予定だった。
しかし、その前にアンネットはシューベルから婚約破棄を言い渡された。
それによってシューベルも一緒にパーティーで断罪されるというお話です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる