殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

真理亜

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 マリウスが北の砦に武者修行に来てから、早いものでもう三ヶ月が経過しようとしていた。

 その間、初めてこの地を訪れた頃に比べるとマリウスは見違えるくらい逞しく成長していた。

「ほら! どうしたポチ! もう終わりか!?」

「く、クォーン...」

 今日も今日とて、ケルベロスのポチと追い掛けっこという名の訓練に明け暮れていた訳だが、最近ではポチの方が先に音を上げるようになって来た。
 
 スタミナもパワーもここに来た頃に比べたら段違いにアップしている。フルアーマーをまるでジャージでも着ているかのように、軽く着こなすことが可能になって来ていた。

「殿下、どうか今日はこのくらいで。ポチが限界を迎えているようですから」

 見かねたミランダがマリウスを抑える。

「やぁ、ミランダ。そっちの訓練はもう終わったのかい?」

「えぇ、今日の分は」

 ここ最近ミランダは魔族領との境界線、つまり最前線の方にはあまり顔を出さなくなっていた。

 魔王アモンとその双子の兄弟サモンが南の地で封印されたため、魔族が極端に弱体化し脅威とならなくなっていたからだ。 

 それでもまたいずれは新しい魔王が誕生し、再び脅威となりうる可能性は否定できないので警戒を怠る訳にはいかない。

 今のミランダの仕事の大部分を占めるのは、魔族領との間の結界の維持と戦力を充実させておくための後進の指導ということになる。

 なので今日もミランダは魔道部隊の強化訓練に教官役として従事していた。

「時に殿下、明日の休養日はどう過ごされます?」

 訓練には週一回の休みを設けている。明日がちょうど休養日にあたる。

「いや、特に予定はない。のんびり寝て過ごそうかなって思ってる」

「そうですか。良かったら私と一緒に街へ出掛けませんか?」

「街へ?」

「えぇ、なんでもここ最近オープンしたとあるお店が評判になってるみたいなんで一緒に行ってみませんか?」

「え、え~と...一応聞くけど...それってお出掛けに見せ掛けた新手の訓練ってことはないよね?」

「イヤですねぇ殿下ったらぁ。私がそんな酷い仕打ちをするはずがないじゃあーりませんかぁ」

「どの口がそう言うか...」

 実際、これまでに何度もマリウスはミランダに酷い目に遭わされて来た。

『訓練を良く頑張ったご褒美にデートしてあげよう』

 と言われて、喜び勇んで付いて行った先が断崖絶壁を登るロッククライミングだったり、

『絶景を堪能できるデートスポットに一緒に行こう』

 と言われて付いて行った先が、遥か上空を飛ぶシオンの背から飛び降りるスカイダイビングだったりと散々だった。なのでマリウスが警戒するのは当然である。

「今回は本当に大丈夫ですって。変わったサービスを提供してくれるお店なんですってよ? 楽しみじゃありませんか?」

「...一応聞くだけは聞くけどなんてお店?」

「なんでも『メイド喫茶』っていうらしいですよ?」
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