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 マリウスを送り出した後、ミランダは馬に跨がって最前線へと向かった。

 魔族軍の動きが気になったからだ。

「ご苦労様。状況はどう?」

「あれ? お嬢? 今回はシオンと一緒じゃないんですかい?」

 最前線の兵士達は日に二度もミランダがやって来たこと、更にシオンに乗っていないことを訝しんだ。

「えぇ、シオンは今ちょっと出張に出てるの」

「さいですか...魔族軍は今んとこ大人しいもんですぜ」

「魔王は? あれから戻って来た?」

「いいや、まだみたいですぜ。いつものように明日にならないと戻って来ないんじゃないんですかね」

「そう...ありがとう。引き続きよろしく頼むわね」

「あれ? また戻っちゃうんですかい?」

「えぇ、あんまり長いこと砦を空には出来ないから」

「さいですか。お疲れ様です」

 魔族軍に動きがないことを確認したミランダはすぐ砦に引き返した。


◇◇◇


 一方その頃、南の砦では気絶したマリウスを、クラウドが手荒に叩き起こしていた。

「おい、起きろ! マリウス!」

「う、う~ん...もう食べられないよ~...」

 マリウスはまだ寝惚け眼だ。

「いつまで寝惚けてる! とっとと起きんか!」

「痛て! なにすんだこの! あ、あれ!? ここは誰!? 私はどこ!?」

「目ぇ覚めたか?」

「えっ!? あ、あれ!? あ、兄上!? えっ!? そ、それじゃあここは南の砦!? えぇっ!? も、もう着いたのか!?」

 マリウスはまだ混乱しているようだ。

「色々と聞きたいことはあるがまず始めに、お前なんで縛られてたんだ!?」

「え、え~とその...じ、実は...」

 マリウスは事の次第を搔い摘まんで説明した。

「なんだと!? 魔王が!?」

「どうやらそうらしい...気を付けるようにってミランダが...」

「なんてこと...このクソ忙しい時に...ホントしつこい男ね...」

 それを聞いたリリアナが忌々し気に呟いた。

「マズいな...魔王の双子の弟だけでも厄介だってのに...その上魔王まで来られた日にゃ二正面作戦を強いられ兼ねない...」

「クラウド殿下、魔族軍は引き続き我らにお任せ下さい。魔王が加わってもなんとかして見せますよ」

「そうね。ミランダのようにはいかないだろうけど、それでも遅れを取るつもりは更々無いわ」

 ガストンとアマンダが実に頼もしい。クラウドとリリアナは顔を見合せて頷き合った。

「マリウス、良く知らせに来てくれた。ミランダに伝えてくれ。こっちは大丈夫だと」

「分かった。そう伝えるよ。それでその...兄上に頼みがあるんだけど...」

「なんだ?」

 マリウスは恥ずかしそうに俯きながらこう言った。

「俺をシオンに縛り付けてくんない?」
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