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「ねぇ、ミランダ。あれ放っておいていいの?」

 リリアナが呆れたような表情を浮かべて尋ねた。

「いいのよ。あんなバカップル放っておきましょう」

 ミランダは冷たく言い放った。

「いや、バカップルって...それにガストンおじ様が鬼のような形相で睨み付けてるけど...」

 リリアナの言う通り、ガストンが苦虫を沢山纏めて噛み潰したような顔でアマンダとマリウスの二人を見ていた。

「そっちも放っておいていいわよ。さぁ、早いところ行きましょう。シオン!」

 ミランダはシオンに声を掛けた。

「グオッ!」

 それに応えてシオンが飛び上がる。

「あ、ミランダったら! 仕方ないわね。ファルファル!」

 リリアナもファルファルコに声を掛ける。

「クエッ!」

 それに応えてファルファルも飛び上がった。

 ちなみにこのやり取りの間中ずっと、クラウドは沈黙を貫いていた。昨日の一件で懲りたのだろう。君子危うきに近付かずといったところか。


◇◇◇


「ガハハハッ! やっと来たか! 待っていたぞ! 我が嫁よ! 愛人よ!」

 今日も今日とて魔王は通常運転だった。

「誰が嫁...」

「誰が愛人...」

 それを聞いたリリアナとミランダの纏うオーラが一気に剣呑なものとなる。このままじゃまた話が進まなくなると慌てたクラウドは、

「魔王! 貴様に聞きたいことがある! 南の砦を蛮族と一緒に攻めるようにと、魔族に指示を出したのは貴様か?」

 焦ったように早口で捲し立てた。

「なにぃ!? 南の砦だとぉ!? 知らんぞそんなもん! 俺様は指示なんぞ出しとらん!」

「なんだって!? それじゃあ一体誰が!?」

「俺様の指示なく魔族が動いてると言うんだな?」

「あぁ、そうだ」

「それなら答えは一つしかない。サモンのヤツが指示を出しているんだろう」

「サモン?」

「あぁ、俺様の双子の弟だ。俺様を、このアモン様を除いて魔族を動かせる者など他にヤツしかおらん」

「魔王...あなた双子だったの? いやそれより、あなたちゃんと名前があったのね...」

 衝撃の事実の連発にしばし呆然と、クラウドと魔王とのやり取りを眺めていたミランダだったが、我に返って思わずそう呟いていた。

「当ったり前だろうがぁ! 俺様をなんだと思ってやがる!」

 魔王激オコである。

「いやてっきり『まおう』って名前だとばっかり...」

「んな訳あるかぁ! 舐めとんのかワレぃ!」

 魔王激オコプンプン丸である。

「いや~メンゴメンゴ...」

 ミランダは取り敢えず軽~く謝っといた。

「ブハァッ! あ、あんた達サイコー!」

 リリアナは一人大ウケしていた。
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