殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

27

「ガハハハッ!　やっと来たか!　待っていたぞ!　我が嫁よ!」

　ミランダ達が最前線に着くと、既に魔王が空を飛んで待ち構えていた。

「だからてめえの嫁になんかならねぇって言ってんだろ!」

「リリアナ、落ち着きなさい。昨日と同じことしないで」

　今にもファルファルの背から飛び降りようとするリリアナをミランダが抑える。

「魔王、アンタにちょっと聞きたいことがあるのよ」

「ん?　なんだ?　愛人?」

「...あいじん?」

「そうだろう?　リリアナが正妻になるならお前は愛人じゃないか?」

　魔王は至極当然と言った顔でそう宣った。

「ふっざけんなぁ!　誰が愛人じゃ～!　弾け飛べやぁ～!」

　激昂したミランダは、思わず最大魔法で魔王を攻撃していた。

「愛人がイヤなら第二夫人で～!」

　そんな最低な言葉を残しながら、魔王は地の果てまで吹っ飛んで行った。

「あっ...」

「ミランダ...」

「私のこと言えないじゃん...」

「ゴメン...つい...」

　二人からジトッとした目で見られたミランダは、小さくなってそう呟いた。

「まぁ、確かに魔王の発言は最低だったが...」

「そ、そうですよね、クラウド殿下!　あれは魔王が悪いですよね!　そうだそうだ!　私悪くない!」

　クラウドの言葉に乗っかるような形でミランダは開き直った。

「いやいや、いくらなんでもアンタ短気過ぎっしょ...」

「あ、アンタにだけは言われたくないんですけど!」

「なんですって!?」

「なによ!?」

「二人とも止めないか...」

　今度はミランダとリリアナの戦いが起こりそうな所に、疲れたような顔をしてクラウドが割って入った。


◇◇◇


　その頃、マリウスは自室のベッドから起き上がれないでいた。

「うぅ...痛たたた...自分の体じゃないみたいだ...」

　筋肉痛、打ち身、捻挫、切り傷、擦り傷、その他諸々。とにかく体が悲鳴を上げている。体力的に限界だった。

「マリウス殿下。失礼しますよ?」

　そこに誰かやって来た。声はミランダに似ているが、ミランダよりはちょっと低い声だ。誰だろう?　と思って見てみると、そこにはミランダを大人にさせたような超美人のお姉さんが佇んでいた。

「うえぁっ!?」

　驚いたマリウスは意味不明な言葉を発して呆然となる。

「お初にお目に掛かります。ミランダの母でアマンダと申します。どうぞ良しなに」

「は、はは!?」

　どう見てもミランダの姉にしか見えない。マリウスは困惑したままだった。

「お可哀想に。かなり扱かれたとお聞きしました。体がお辛いのではないですか?」

「えっ!?　あ、あぁ、はい...」

「治療して差し上げましょう。服を脱いで下さい」

「あ、はい...はい!?」

　マリウスはビックリして思わず聞き返していた。