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「私は魔法が得意だって言ったでしょう? 魔族の侵攻を魔法で防いでいるのは私ですよ?」

「そ、そうだったのか...済まん...全く知らなかった...」

「南の砦と違って北の砦を守るには魔法が使えることが必須ですからね。ちなみに殿下は魔法の方は?」

「い、いや、からっきし...」

 マリウスは恥ずかしそうに俯いた。

「そうなんですね。でも大丈夫です。ウチにも脳筋連中は沢山居ますから。かくいう私の父親がまさにそれです」

「そ、そうなんだ...」

「えぇ、そういった脳筋連中に鍛えて貰えば殿下だってきっと戦力になりますよ。頑張って下さいね?」

「う、うん...頑張ってみる...」

 自信無いけど...と、マリウスは心の中だけで続けた。

「さて、そろそろ北の砦に到着しますよ」

「えっ!? も、もう着いたのか!?」

「言ったじゃないですか? 飛竜ならひとっ飛びだって」

「いや確かにそう言ってたけど...」

 まだ心の準備が...と、マリウスはまたも心の中だけで続けた。


◇◇◇


「殿下、見えて来ましたよ。あれが北の砦です」

「うわぁ...凄いデカい...」

 マリウスは、砦というからにはアラモ砦のようなものを漠然と思い浮かべていた。いかにも軍事要塞と言ったような。だが格が違った。

 まるでカルカッソンヌのように、周囲をニ重の城壁に囲まれた北の砦は、もはや砦じゃなく城塞都市と言っても過言ではないだろう。そんなスケールの大きさを肌で感じる建造物に、マリウスはすっかり圧倒されてしまった。

「どうですか? 立派なもんでしょう?」

 ミランダはどこか誇らし気だ。

「立派というか圧巻というか...」

 マリウスはそれ以上言葉が出なかった。

「シオン、真っ直ぐ中央広場に降りて?」

「グオッ!」

 ミランダがそう指示すると、シオンはまるで赤の広場のように開けた場所にゆっくりと降りて行った。

「ミランダ~!」

 すると地上から野太い声でミランダの名前を呼ぶ者が居る。全身をフルアーマーで包んだ筋骨逞しい騎士だった。身の丈2mを超えてるだろうか。横にも縦にも広がった堂々とした体躯である。

「あ、あれは私の父です。わざわざ出迎えに来てくれたんですね」

「ち、父親~!?」

 悪いけど全く似てない。どこにもミランダとの共通点が見当たらない。本当に父親なのか? と、疑いたくなるレベルである。

「ミランダ~! 我が愛しい娘よ~!」

「ただいまパパ。なにもわざわざ出迎えなんかしなくて良かったのに」

 全身フルアーマーによる、ほとんど突進に近い熱烈なハグを華麗に避けながら、ミランダはそう言って苦笑した。
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