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「では婚約者同士のファーストダンスを披露して貰おうかの!」

 国王がニコニコしながらそう言った。
 
「「 えっ... 」」

 ライルとカレンの二人は固まった。

「ん? どうした? 何か問題でも?」

「「 い、いえ、何の問題もありません! 」」

 国王にそう言われては仕方ない。二人はこの世の終わりのような顔をしながらダンスフロアへと向かって行った。

 そんな子供達を苦笑しながら見送ったスミスとアマンダは、

「取り敢えず、上手く行った...のかな?」

「国王陛下に祝福を頂いたのよ? これでもう逃げ場は無いと諦めて...欲しいわね...」

「そうだな...なぁ、せっかくだから久し振りに俺達も踊ってみないか?」

「いいけど、私、確実にあなたの足を踏むわよ?」

「あぁ、大丈夫。ダリアで慣れてるから。鍛えられたよ」

「あぁ、そういえばダリアも私に負けず劣らず下手くそだったわね」

「あぁ、ロバートと二人で密かに足を鍛えていたのも今となっては良い思い出だよ」

 二人は一緒に笑った。懐かしい思い出は、在りし日のダリアとロバートの姿を思い起こさせた。あの二人が生きていたら、今のこの状態をどう思うだろうか? そんなことを考えた。

「さぁでは、マドモアゼル。お手をどうぞ?」

「ウィ、ムッシュー」

 アマンダは気取ったスミスの手を取る。そして二人は久し振りに踊るためダンスフロアへと向かって行った。


◇◇◇


「ほら見てあれ? 二人とも物凄い顔してダンスを踊ってるわよ?」

「ホントだ。今にも噛み付き合いそうだな...」

「ちょっと止めてよ...シャレになんないわ...っと、ゴメン.. 」

 アマンダはさっきからスミスの足を踏み捲っているので、申し訳ない気持ちで一杯だった。

「いいから気にすんな。それよりアイツらが近付いて来たぞ?」

「えっ!?」

 アマンダが顔を上げると、物凄い勢いで踊りながらライルとカレンが近付いて来た。そして...

「「 ガルルルッ! 」」

 と、唸り声を上げた。やがて曲が終わった。

「お父様! 次は私と踊りましょう! あの女狐に付けられた匂いを私の匂いで上書きせねば! 一刻も早く! さぁ、参りましょう! このまま朝まで踊り続けますわよ!」

「母上! 次は俺と踊りましょう! あんなエロ中年オヤジの加齢臭を俺の匂いで上書きせねば! 一刻も早く! さぁ、行きましょう! 今宵はオールナイトで!」

「「 ハァッ... 」」

 スミスとアマンダの二人は大きなため息を吐いた。まだまだ先は長そうだ。二人はそれぞれの子供の手を取りながら、これからどうしようかと思案を巡らせていた。

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