聖女である私を追放する? 別に構いませんが退職金はしっかり払って貰いますからね?

真理亜

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「助けて貰って当たり前。困った時には誰かに助けて貰えば良い。そんな考えを子供の時から持ってしまったら、努力することをしない大人に育ってしまいます。だから私は最初に言ったんですよ。一生守ってあげるつもりなんですかと」

「そういう意味だったのか...」

 やっと思い至ったのか、フリードリヒは神妙な顔付きで頷いた。

「あぁそれと、別に子供に対してだけ厳しいことを言ってる訳じゃありませんよ? 老若男女問わず同じことを言ってます。死に物狂いで努力するという一点に於いては、年齢も男女も関係無いですからね。王太子殿下がたまたま目撃されたのが子供の時だったということだけです」

「あぁ、それは知っている...神殿の方に色々な人からクレームが入っていたからな...とにかく金に汚い聖女だと...あんなのを聖女として崇めるのはおかしいと...だから俺は...」

 アンジュの厳しい言葉の真意を知ったフリードリヒは、そこで言葉を詰まらせてしまった。

「心お優しい王太子殿下は、私を排除して全てを救って差し上げるおつもりなんですよね? ご立派な心掛けだと思いますよ? せいぜい頑張って下さいね? ただ出来れば、もっと早くそういった試みを実践して欲しかったですよ。子供だった私達も救って欲しかったですからね」

「うぐ...」

 アンジュから皮肉たっぷりにそう言われたフリードリヒは唸るしかなかった。

「さて、肝心の退職金の件ですが、実は既に国王陛下から提示されているんですよ。こちらです」

 そう言ってアンジュは一枚の紙を取り出した。

「既に提示されているだと!? そりゃ一体どういうことだ!?」

 フリードリヒは紙を受け取りながら訝し気に尋ねた。

「私が王太子殿下と結婚しないことを認めて下さったと言いましたよね? つまり私は、王族の一員となって受け取るはずだった財産を放棄したということになります。それでは不憫だろうということで、代わりに退職金を色付けして下さったんですよ」

 フリードリヒは紙に書いてある金額を見て驚いた。それは王家の財産の四分の一に当たる金額だったからだ。

「なっ!? こんなにか!? 父上はこんな金額を払う約束をしたのか!?」

 一体なぜ!? たかが一人の聖女風情にこれだけの金額を払う必要がどこにある!? フリードリヒの表情は雄弁にそう語っていた。それに気付いたアンジュは静かに尋ねた。

「王太子殿下は聖女という存在について、国王陛下からどのように聞いてらっしゃいますか?」

「えっ!? あ、あぁ、それは...国防の要である結界を張ってくれる重要な存在だから...その...大事にするように...と...」

 最後の方は尻窄みになりながらフリードリヒはそう言った。
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