聖女である私を追放する? 別に構いませんが退職金はしっかり払って貰いますからね?

真理亜

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「ハンッ! また金の話か! どこまで行っても意地汚い女だな! だから貴様は聖女に相応しくないと言ったんだ!」

 フリードリヒは蔑むような視線でアンジュを見下ろした。

「労働に対する対価を要求するのは当然の権利でしょう? 私はこうしている間も寝ている間もずっと、結界を維持するために24時間魔力を注ぎ続けているんですよ? 私の魔力供給が途絶えたら、あっという間に結界が消えて魔物の群れが襲い掛かって来ますが、それでも構わないってことなんですよね?」

 アンジュはそんなフリードリヒの視線を物ともせず、淡々とそう言い切った。

「フンッ! 二言目にはまたそれか! どれだけ自分を犠牲にしているかのアピール! 全く以て浅ましい女だ! だが残念だったな! 貴様の後任には魔力の多い中から選んだ5人の女を既に用意している! 一人一人の魔力は貴様に及ばないかも知れんが、5人合わせれば貴様を凌駕するのは簡単なずだ! ハハハッ! どうだ? 恐れ入ったか? 貴様は常々言っていたな!『一人の聖女の力にずっと頼っているのは危険だ』と。どうだ? これなら文句あるまい? ハーッハハハッ!」

 フリードリヒはさも得意気に大笑いした。

「確かにそう言いました。ですが、それはそういう意味で言ったんじゃなかったんですが...」

 アンジュは少し寂し気な表情を浮かべてそう言った。

「なに!? それはどういう意味だ!?」

 フリードリヒは笑いを止め、訝し気な表情を浮かべて尋ねた。

「いえ、もういいです...」

「なんだ!? ハッキリしないヤツだな! まぁいい! とにかくこれで貴様はお払い箱だ! 退職金は払ってやるから、とっとと消え失せるがいい! フフフッ! 評判の悪い守銭奴聖女が居なくなれば、我々王族に対する国民の支持はさぞや上がることだろう! これからは無償で癒してやるのだからな! ハハハッ!」

「無償!? 王太子殿下、本気ですか!? いや正気ですか!?」

 フリードリヒの発言に驚いたアンジュは、思わず素に戻って尋ねていた。

「当たり前だろう! 困っている国民に手を差し伸べるのは王族としての義務なんだからな!」

「ご立派な心掛けですね。そうやって国民一人一人の面倒を一生見てあげるんですか。この国の国民はずっと王族におんぶにだっこ状態で生きて行くという訳ですね。そりゃさぞかし楽でしょうよ」

 アンジュは皮肉たっぷりにそう言った。

「な、なんだとぉ~!? 貴様ぁ~! 俺のことをバカにしているのかぁ~!」

 フリードリヒが激昂するがアンジュは涼しい顔で、

「ねぇ、王太子殿下。ちょっと昔話を聞いて貰えませんか?」
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