上 下
2 / 4

2

しおりを挟む
「はぁっ!? それはどういう意味だ!?」

 エロスが目を剥いた。

「言葉通りの意味です。国王陛下夫妻が外遊中の今、私がこの国の最高統治者ですから」

 私はシレッと答える。

「そんな訳があるかぁ! 王太子であるこの俺を差し置いて、なんで貴様が最高統治者になれるんだぁ!?」

「だってあなた、仕事してないじゃないですか。王太子としての仕事何かしてますか? そこの阿婆擦れと乳繰り合ってるだけでしょ?」

「うっ!? そ、それは.. 」

「私が目の下に隈を作ってまで王太子の仕事を代行している間、あなたは私を貶めることだけを考えていたんでしょう? そんな人間に国を任せられるはずがありませんよ。たがら国王陛下は私にこの玉璽を委ねて行かれたんです」

 そう言って私は懐から玉璽を取り出した。

「バカな...そんなバカな...」

 エロスが崩れ落ちた。バカなのはお前だっての。

「大体ですねぇ、周辺各国が集まる国際会議に出席する国王陛下が、あなたではなく第2王子のパウロ様を随行させた時点でおかしいとは思わなかったんですか?」

「それは...俺に留守を任せるって意味かと...」

「周辺各国に次の国家元首のお披露目をするのに絶好の機会を逃してまで? 有り得ませんよ。それだったらパウロ様の方を残すでしょう。あなたが次期国家元首であるならね」

「そ、それはつまり...」

「えぇ、あなたは廃嫡されてパウロ様が王太子になるということです」 

「そ、そんな...」

「だから既にあなたには何の権限も無いんですよ。そもそもですねぇ、聖女でありこの国を魔物から守っている私を追放するなんて言語道断です。国を滅ぼす気ですか? 聖域結界が無くなったら、この国は魔物の餌食になるんですよ? 分かってるんですか?」

「うぅっ...」

「それと私との婚約を破棄したいとか言ってましたが、そんなことしなくても私達の婚約は解消されますからご心配なく。私は新たにパウロ様の婚約者になりますから。あなたは平民になってそこの阿婆擦れと仲良くやって下さいな。真実の愛とやらなんでしょう?」

「......」

 ついにエロスは無言になってしまった。

「えっ!? なになに!? どういうこと!? エロス様は王子様じゃなくなっちゃうってこと!?」

 そこへ阿婆擦れインランが口を出して来た。

「えぇ、そうなりますね」

「えぇ~! じゃあエロス様なんて要らな~い! じゃあね! バイバ~イ!」

 そう言って軽やかに去って行った。
 
 ドサッ!

 どうやらエロスはショックのあまり気を失ったようだ。

 やれやれ...



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

酔って婚約破棄されましたが本望です!

神々廻
恋愛
「こ...んやく破棄する..........」 偶然、婚約者が友達と一緒にお酒を飲んでいる所に偶然居合わせると何と、私と婚約破棄するなどと言っているではありませんか! それなら婚約破棄してやりますよ!!

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

本当の聖女が見つかったので私はお役御免だそうです

神々廻
恋愛
この国では聖女を探すべく年頃になると、国中の女聖女であるかのテストを受けることのなっていた。 「貴方は選ばれし、我が国の聖女でございます。これから国のため、国民のために我々をお導き下さい」 大神官が何を言っているのか分からなかった。しかし、理解出来たのは私を見る目がまるで神を見るかのような眼差しを向けていた。 その日、私の生活は一変した。

婚約破棄したのに断罪されそうなんですけど....?

神々廻
恋愛
私は明日、海の向こうの国に嫁ぎます。そして、王家主催のパーティでお別れ会をする予定があのバカ王子のせいで台無しになりそうなんですけど!?断罪する気ならもっと前にしろやぁぁ!!聖女と結婚?出来るわけ無いでしょ!!それでもお前は王族か!!! 全2話完結

帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動

しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。 国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。 「あなた、婚約者がいたの?」 「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」 「最っ低!」

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。

七辻ゆゆ
ファンタジー
王子は庶民の聖女と結婚してやったが、関係はいつまで経っても清いまま。何度寝室に入り込もうとしても、強力な結界に阻まれた。 妻の務めを果たさない彼女にもはや我慢も限界。王子は愛する人を妻に差し替えるべく、元聖女の妻に離縁を言い渡した。

処理中です...