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『お嬢様!』
ちょうどお医者様と入れ替わるようなタイミングで、セバスチャンとカイルがほぼ同時にアランの病室へとやって来た。相変わらずシンクロしている。
二人とも着替えは済ませたみたいで身なりは整っているが、頭や両腕などに巻かれた包帯がとても痛々しい。
「あなた達! 安静にして寝てなきゃダメじゃないの!」
私は思わず叱り飛ばしたのだが、
『寝てなんかいられませんよ!』
またもやシンクロでそう返された。もはや名人芸の域なんじゃね?
「全くもう...気持ちは良く分かるけど、あなた達二人が付いてたって状況は変わらないわ。寧ろ病室が狭く感じて息苦しくなるから大人しく自分の病室に戻りなさい。アランには私が付いていればいいから」
『し、しかし...』
「しかしも案山子もない。これは命令よ?」
『わ、分かりました...』
二人は渋々といった体で下がって行った。最後までシンクロしてたな。
「フゥ...」
さすがにちょっと疲れた...私はアランの手を握り締めながら大きなため息を一つ吐いた。
◇◇◇
「...様、嬢様...」
「う~ん...」
なんだろう? 誰かに呼ばれているような? 誰だろう?
「お嬢様!」
「ハッ!?」
「お嬢様! こんな体勢で寝たら体に良くありません! ちゃんとベッドで横になってお休みください!」
どうやら私はアランの手を握り締めた状態のまま寝落ちしていたらしい。起こしてくれたシェイラが心配そうに覗き込んでいる。
「あぁ、シェイラ...大丈夫、大丈夫だから...」
「全然大丈夫じゃありませんよ! お嬢様、酷いお顔になっていますよ!? お願いですから休んでください! アランさんにはこのシェイラが付いていますから!」
「酷い顔ってあなたね...」
なかなか言うじゃないか。まぁでも、多少の自覚はあるんだけどね。きっと鏡を見たら自分でもビックリするくらいに、今の私は疲れ切った顔をしていることなんだろう。
「ちょっと顔洗ってくるわ...」
私はヨロヨロと立ち上がりながら洗面所に向かおうとした。
「た、大丈夫ですか!? お嬢様!?」
すかさずシェイラが体を支えてくれた。
「あぁ、ありがとう...」
「洗面所までお供致しましょうか?」
「大丈夫...大丈夫...一人で平気だから...」
私はヒラヒラと手を振ってアランの病室を後にした。
「アンリエットお嬢様」
病室を出てすぐの所でネオに呼び止められた。
「うん~!? ネオ~!? どうしたの~!?」
私はまだ良く回っていない頭でボンヤリと尋ねた。
「危険です。病室にお戻りください。カスパート家の手の者が病院内に侵入した形跡があります」
「な、なんですって!?」
私の頭は一瞬で覚醒した。
ちょうどお医者様と入れ替わるようなタイミングで、セバスチャンとカイルがほぼ同時にアランの病室へとやって来た。相変わらずシンクロしている。
二人とも着替えは済ませたみたいで身なりは整っているが、頭や両腕などに巻かれた包帯がとても痛々しい。
「あなた達! 安静にして寝てなきゃダメじゃないの!」
私は思わず叱り飛ばしたのだが、
『寝てなんかいられませんよ!』
またもやシンクロでそう返された。もはや名人芸の域なんじゃね?
「全くもう...気持ちは良く分かるけど、あなた達二人が付いてたって状況は変わらないわ。寧ろ病室が狭く感じて息苦しくなるから大人しく自分の病室に戻りなさい。アランには私が付いていればいいから」
『し、しかし...』
「しかしも案山子もない。これは命令よ?」
『わ、分かりました...』
二人は渋々といった体で下がって行った。最後までシンクロしてたな。
「フゥ...」
さすがにちょっと疲れた...私はアランの手を握り締めながら大きなため息を一つ吐いた。
◇◇◇
「...様、嬢様...」
「う~ん...」
なんだろう? 誰かに呼ばれているような? 誰だろう?
「お嬢様!」
「ハッ!?」
「お嬢様! こんな体勢で寝たら体に良くありません! ちゃんとベッドで横になってお休みください!」
どうやら私はアランの手を握り締めた状態のまま寝落ちしていたらしい。起こしてくれたシェイラが心配そうに覗き込んでいる。
「あぁ、シェイラ...大丈夫、大丈夫だから...」
「全然大丈夫じゃありませんよ! お嬢様、酷いお顔になっていますよ!? お願いですから休んでください! アランさんにはこのシェイラが付いていますから!」
「酷い顔ってあなたね...」
なかなか言うじゃないか。まぁでも、多少の自覚はあるんだけどね。きっと鏡を見たら自分でもビックリするくらいに、今の私は疲れ切った顔をしていることなんだろう。
「ちょっと顔洗ってくるわ...」
私はヨロヨロと立ち上がりながら洗面所に向かおうとした。
「た、大丈夫ですか!? お嬢様!?」
すかさずシェイラが体を支えてくれた。
「あぁ、ありがとう...」
「洗面所までお供致しましょうか?」
「大丈夫...大丈夫...一人で平気だから...」
私はヒラヒラと手を振ってアランの病室を後にした。
「アンリエットお嬢様」
病室を出てすぐの所でネオに呼び止められた。
「うん~!? ネオ~!? どうしたの~!?」
私はまだ良く回っていない頭でボンヤリと尋ねた。
「危険です。病室にお戻りください。カスパート家の手の者が病院内に侵入した形跡があります」
「な、なんですって!?」
私の頭は一瞬で覚醒した。
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