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「これは酷い...取り敢えず一刻も早く病院に向かいましょう! おいっ! 君達! 手伝ってくれ!」

 お医者様はアランの様子を一瞥した後、矢継ぎ早に指示を下す。呼ばれてやって来たのは二人の看護師だ。

「僕が頭の方を持つから君らは足の方を頼む! いいか!? ゆっくりだぞ!? タイミングを合わせるからな!? 3、2、1、今!」

 アランの体を慎重に持ち上げたお医者様方は、乗って来た馬車の後部を開けた。その馬車は病人運搬用なのだろう。通常の馬車の座席を外して、人一人を横に寝かせられるスペースが確保されていた。そこに簡易ベッドが備え付けてある。

「良し! ゆっくりとだぞ! 慎重に慎重に!」

 お医者様はアランの体を静かに簡易ベッドの上に寝かせた。

「では出発します! 同行される方は急いで乗ってください!」

「はいっ!」

 私はカイル、セバスチャンと一緒に馬車へ乗り込んだ。


◇◇◇


 病院に着くまでの間にも、お医者様は黙々とアランに応急措置を施してくれていた。私達は固唾を飲んで見守るしか出来なかった。とてもじゃないが話し掛けられるような雰囲気じゃなかったからだ。

 やがて病院に着くと、予め連絡してあったのか数名の看護師がストレッチャーと共に待ち構えてくれていた。

「すぐに手術室へ運んでくれ!」

 お医者様の指示の下、看護師達がアランの体をストレッチャーに乗せた。

「あ、あの!」

 そこで私は勇気を出してお医者様に尋ねてみた。

「アランは...大丈夫なんでしょうか...」

「全力を尽くします! 待ち合い室でお待ちください!」

 それだけ言ってお医者様は急ぎ手術室へと駆けて行った。私は頭を下げ「お願いします...」と心から祈った。


◇◇◇


 待ち合い室へと向かう前に、私はカイルとセバスチャンに命じた。

「あなた達もちゃんと治療を受けて貰いなさい」

『で、でもお嬢様...』

 二人の声がシンクロした。

「でももヘッタクレもないわ。あなた達、お互いの姿を見てみなさいな? 酷い有り様よ?」

 二人とも怪我からの出血は止まったようだが、頭の先から足の爪先まで全身隈無く傷だらけだ。とても見てられない。

 二人は顔を見合せてなんとも言えない表情を浮かべている。

「あなた達にまで倒れられたら堪んないわ。これは命令よ。治療を受けなさい」

『わ、分かりました...』

「ん、よろしい。あ、ちょっとすいません!」

 私は看護師の一人を呼び止めた。

「はい? なんでしょうか?」

「この二人の治療もお願いします」

 二人の様子に看護師は目を丸くした。
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