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 翌日、エリザベートが訪ねて来た。

「アンリエット、カイルから聞いたわ。無事に終わってなによりね?」

「ありがとう。あなたにも心配を掛けたわね」

「水臭いわね。当然じゃないの」

「そっちはどうだった? 勃起った?」

「そんなすぐには復活しないわよ...気長に治療を受けて貰うことにするわ」

「なるほどね。あなたもまだ安定期に入ってないんだし、ちょうどいいんじゃない? お互いに控えるってことで。お腹の子のためにも少し休憩しなさいよ」

 そもそもがやり過ぎだっちゅうの。

「えぇ、そうするわ」

 するとそこにセバスチャンがやや緊張した面持ちでやって来た。

「お嬢様方、失礼致します」

「どうかしたの?」

「カスパート男爵が血相を変えてやって来ました」

「あら、早かったわね」

 遅かれ早かれ来るとは思ってたけどね。

「如何致しましょうか?」

「そうねぇ...玄関払いすることにしましょうか」

 私が席を立つと、エリザベートが慌てた様子で、

「ちょっと待った! アンリエット、あなた玄関払いの意味ちゃんと分かってる!?」

「へ!? 家の中に上げずに玄関で会うってことじゃないの!?」

「違うわよ! 会わずに追い返すって意味よ!」

「あ、そうなんだ...」

 恥ずかしい...素で勘違いしてたよ...

「全くもう...しょうがないわね...セバスチャン、カスパート男爵にはこう伝えなさい。アンリエットは金輪際、あなた方に会う気はないから二度と来るなと」

「か、畏まりました...」

「それでもまだなんかごちゃごちゃと言って来るようだったら、構わないから叩き出しちゃいなさい。カイル、あなたも一緒に行って?」

「分かりました」

 セバスチャンとカイルが部屋を出て行った後、私はエリザベートに向き直って、

「え~と...なんか色々とありがとうね」

 しみじみとそう言った。

「どういたしまして。こういう手合いには慣れっこだからね」

「さすが場数が違う」

 私は素直に称賛した。

「それ誉めてんの?」

「そらもう」

「まぁいいわ...取り敢えず、もうしばらくカイルはあなたに付けておくことにするから」

「うん、ありがと」

「ところでアランは?」

「執事見習い修行中」

「まだやってんの?」

「昨日、ちょっとした不手際があったからね」

「そうなんだ。アランも大変ねぇ」

「まぁね」

 師匠のセバスチャンは他人には厳しく自分には甘い人だからね。アランもさぞかし苦労が絶えないことだろうよ。

 私は同情しつつも、アランならそんな試練も乗り越えてくれると信じている。


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