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「分かりましたわ。今日は天気も良いので、中庭に出ましょうか? 我が家の庭園はちょっとした自慢でもありますのよ?」

 こんなブタと閉め切った部屋の中で二人っきりになったりしたら、確実に息が詰まると思った私は、そう提案して相手の返事も聞かずに席を立った。

「おぉ! それは良いですな! ほら! なにをしとるか! ヘンドリック! さっさと立たんか!」

「ブヒブヒ~...」

 茶菓子に未練たっぷりな様子のブタは、不承不承と言った体で席を立った。

「どうぞブ...ヘンドリック様、こちらですわ」

 危ない危ない。思わずブタって言っちゃうところだったよ。私は先に立って歩きながら、なんだかペットを散歩させているような感覚に囚われていた。いや、こんなデカクて可愛くないペットなんか要らんけどね。


◇◇◇


「如何でしょうか、ヘンドリック様? 我が家の庭園は?」

 私は庭園を歩きながら、後ろを振り返ってみたのだが...

「ブヒ~...ブヒ~...」

 ちょっと歩いただけでブタは、大粒の汗を浮かべながら息を切らしていた。おいおい...大丈夫か? 顔が青くなってんだけど...倒れたりしないだろうな...

「ヘンドリック様、こちらの四阿で一休み致しましょうか?」

「ブヒ~...」

 心配になった私は、取り敢えず中庭の一角にある四阿に案内することにした。

「セバスチャン、なにか冷たい飲み物を」

「畏まりました」

 当然ながら完全に二人っきりになる訳ではなく、アランとセバスチャンは近くに控えている。それは部屋の中であったとしても同じだ。

 敢えてセバスチャンの方を指名したのは、アランの体中から梃子でも私の側を離れるもんかという強い意志をヒシヒシと感じたからだったりする。

 まぁ、それほどまでに私のことを心配しているっていう意志表示なんだろう。だから、私としても悪い気はしていない。

「ヘンドリック様、少しは落ち着かれましたか?」

「ブヒ~...」

 まだ汗は浮かべているが、ようやく少し息は整ったらしい。それにしてもコイツは本当にブタなんじゃないか? さっきからブヒブヒしか言わないんだが...

「ヘンドリック様は私とのお見合いをどのように感じておられるのですか?」

 私は核心に触れてみることにした。

「えっ!? どうって!?」

 やっとブヒブヒ以外の言葉を発したか。

「歓迎されておられるのか、それとも鬱陶しいと思っておられるのか、どちらなんでしょうか? という意味です」

「そ、それはもちろん...歓迎している...かも!?」

 なんだよその疑問符は!?
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