256 / 276
256
しおりを挟む
「身も蓋もない言い方にはなってしまいますが...我が家には金だけはあります。なにせ爵位も金で買った程ですからな。貴家になにかあった時には、資金面での支援をお約束出来ますぞ」
カスパート男爵はニコニコと笑いながら、まるで商人のように揉み手をしているが、カスパート家の内情が火の車だということは調べが付いている。
実際に言ってることと真意は真逆で、資金面での支援を今すぐにでも受けたいと思っているのはカスパート家の方だろう。
それも我が家を乗っ取るという形で。もちろん、そんなことを許す訳がない。なので、
「ありがたいお言葉ですが、我が家で経営している出版社は好調な売り上げに推移しておりまして、資金面での支援は当面必要ありませんわ。ところでちょっと小耳に挟んだんですけど、貴家が経営している出版社は売り上げが低調気味に推移しているとか。そんな中で資金面での支援なんか約束して本当に大丈夫なんですか?」
「い、いやぁ...これはこれは...一本取られましたな...ハハハ...」
途端にカスパート男爵は尋常じゃない量の汗を掻き始めた。この人あれだな。商人としても二流以下なんじゃないか?
こんなに分かり易く顔に出しちゃダメだろう。商談の時に相手に舐められる。こんなんで良く今まで出版社を経営してこられたな。
よっぽど優秀なブレーンが付いているのか、またはこの人の親が相当な遣り手で、親の七光りだけでこれまでやってこれたのか。きっとそのどっちかなんだろうな。
何れにしても、この人の代でカスパート家の栄華は終わりそうだな。なにせ跡取り息子のヘンドリックはと言えば、私達の話なんて意にも介さず「ブヒブヒ」言いながらただひたすら茶菓子に夢中になって貪り食っているんだから。
「ま、まぁ今はほんの過渡期みたいなもんでしてね...そ、その内にまた好調に推移し始めますよ...ハハハ...」
どっから来るんだその根拠は? 私が問い詰めようとした時、
「あ、あなたあなた! わ、私達とお話ししていたってアンリエット様は退屈でいらっしゃいますでしょう? こ、ここはほら、若いお二人の邪魔をするべきてはなくてよ?」
「お、おぉ! そ、そうだったな!」
形勢不利と悟ったのか、男爵夫人がすかさずフォローを入れて来た。
「アンリエット様、私共はこれにて退散致しますので、後は若いお二人にお任せしたいと思い...って、おい! 聞いてるのか、ヘンドリック! いつまで食っとるか!」
「ブヒブヒッ?」
いや私、こんなんと二人っきりになんの!? イヤ過ぎんだけど...
カスパート男爵はニコニコと笑いながら、まるで商人のように揉み手をしているが、カスパート家の内情が火の車だということは調べが付いている。
実際に言ってることと真意は真逆で、資金面での支援を今すぐにでも受けたいと思っているのはカスパート家の方だろう。
それも我が家を乗っ取るという形で。もちろん、そんなことを許す訳がない。なので、
「ありがたいお言葉ですが、我が家で経営している出版社は好調な売り上げに推移しておりまして、資金面での支援は当面必要ありませんわ。ところでちょっと小耳に挟んだんですけど、貴家が経営している出版社は売り上げが低調気味に推移しているとか。そんな中で資金面での支援なんか約束して本当に大丈夫なんですか?」
「い、いやぁ...これはこれは...一本取られましたな...ハハハ...」
途端にカスパート男爵は尋常じゃない量の汗を掻き始めた。この人あれだな。商人としても二流以下なんじゃないか?
こんなに分かり易く顔に出しちゃダメだろう。商談の時に相手に舐められる。こんなんで良く今まで出版社を経営してこられたな。
よっぽど優秀なブレーンが付いているのか、またはこの人の親が相当な遣り手で、親の七光りだけでこれまでやってこれたのか。きっとそのどっちかなんだろうな。
何れにしても、この人の代でカスパート家の栄華は終わりそうだな。なにせ跡取り息子のヘンドリックはと言えば、私達の話なんて意にも介さず「ブヒブヒ」言いながらただひたすら茶菓子に夢中になって貪り食っているんだから。
「ま、まぁ今はほんの過渡期みたいなもんでしてね...そ、その内にまた好調に推移し始めますよ...ハハハ...」
どっから来るんだその根拠は? 私が問い詰めようとした時、
「あ、あなたあなた! わ、私達とお話ししていたってアンリエット様は退屈でいらっしゃいますでしょう? こ、ここはほら、若いお二人の邪魔をするべきてはなくてよ?」
「お、おぉ! そ、そうだったな!」
形勢不利と悟ったのか、男爵夫人がすかさずフォローを入れて来た。
「アンリエット様、私共はこれにて退散致しますので、後は若いお二人にお任せしたいと思い...って、おい! 聞いてるのか、ヘンドリック! いつまで食っとるか!」
「ブヒブヒッ?」
いや私、こんなんと二人っきりになんの!? イヤ過ぎんだけど...
24
お気に入りに追加
3,482
あなたにおすすめの小説

真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。
けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。
悪夢はそれで終わらなかった。
ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。
嵌められてしまった。
その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。
裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。
※他サイト様でも公開中です。
2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。
本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる