我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「身も蓋もない言い方にはなってしまいますが...我が家には金だけはあります。なにせ爵位も金で買った程ですからな。貴家になにかあった時には、資金面での支援をお約束出来ますぞ」

 カスパート男爵はニコニコと笑いながら、まるで商人のように揉み手をしているが、カスパート家の内情が火の車だということは調べが付いている。

 実際に言ってることと真意は真逆で、資金面での支援を今すぐにでも受けたいと思っているのはカスパート家の方だろう。

 それも我が家を乗っ取るという形で。もちろん、そんなことを許す訳がない。なので、

「ありがたいお言葉ですが、我が家で経営している出版社は好調な売り上げに推移しておりまして、資金面での支援は当面必要ありませんわ。ところでちょっと小耳に挟んだんですけど、貴家が経営している出版社は売り上げが低調気味に推移しているとか。そんな中で資金面での支援なんか約束して本当に大丈夫なんですか?」

「い、いやぁ...これはこれは...一本取られましたな...ハハハ...」

 途端にカスパート男爵は尋常じゃない量の汗を掻き始めた。この人あれだな。商人としても二流以下なんじゃないか?

 こんなに分かり易く顔に出しちゃダメだろう。商談の時に相手に舐められる。こんなんで良く今まで出版社を経営してこられたな。

 よっぽど優秀なブレーンが付いているのか、またはこの人の親が相当な遣り手で、親の七光りだけでこれまでやってこれたのか。きっとそのどっちかなんだろうな。

 何れにしても、この人の代でカスパート家の栄華は終わりそうだな。なにせ跡取り息子のヘンドリックはと言えば、私達の話なんて意にも介さず「ブヒブヒ」言いながらただひたすら茶菓子に夢中になって貪り食っているんだから。

「ま、まぁ今はほんの過渡期みたいなもんでしてね...そ、その内にまた好調に推移し始めますよ...ハハハ...」

 どっから来るんだその根拠は? 私が問い詰めようとした時、

「あ、あなたあなた! わ、私達とお話ししていたってアンリエット様は退屈でいらっしゃいますでしょう? こ、ここはほら、若いお二人の邪魔をするべきてはなくてよ?」

「お、おぉ! そ、そうだったな!」

 形勢不利と悟ったのか、男爵夫人がすかさずフォローを入れて来た。

「アンリエット様、私共はこれにて退散致しますので、後は若いお二人にお任せしたいと思い...って、おい! 聞いてるのか、ヘンドリック! いつまで食っとるか!」

「ブヒブヒッ?」

 いや私、こんなんと二人っきりになんの!? イヤ過ぎんだけど...
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