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「そ、そうですね...で、では失礼しまして...」

 カスパート一家はややぎこちない様子ながらも、簡易祭壇の前で膝を付いて祈りを捧げた。

「ありがとうございます。亡き両親の喜ぶ姿が目に浮かぶようですわ」

「そ、それは良かったです...」

 どうやら機先を制することに成功したらしい。カスパート一家はなんだか居心地悪そうにしている。良し良し。作戦通りだな。

「では皆さん、歓談の場へ移動しましょうか?」

 私は先に立って歩き始めた。場所は私の執務室で行うことにした。私が客間の一つを『白菊の間』に改造してしまったからだ。

 もちろん他にも客間はあるのだが、コイツらを客とは思っていないので、客間には通したくなかったのだ。

「どうぞ。お座り下さい」

 執務室に置いてあるソファーは、当然ながら客間のあるそれとは格段に質が落ちる。カスパート一家は、やや固めで小さめのソファーに身を寄せ合うようにして、各々の大きな体を縮こまらせながら座っている。

 もちろん、これも嫌がらせのようにわざと小さめのソファーを用意しておいたのだ。

 私達がソファーに腰を下ろすと同時に、セバスチャンとアランがお茶を運んで来てくれた。ちなみにカイルは部屋の外で見張ってくれている。

「カスパート男爵家はサンタンデル伯爵家と懇意にされているのですか?」

 私はまず、事実関係を確認してみようと思った。

「はい、サンタンデル伯爵様には良くして貰っております」

「我が家を紹介して欲しいとサンタンデル伯爵にお願いした背景とは、やはり我が家で経営している出版社との絡みであるということになりますでしょうか?」

 私はいきなり核心を突いてみた。

「いやはや...これはこれは...さすがのご慧眼ですな...そこまでご存知であれば隠し立てしても仕方ありませんね...おっしゃる通りです。我が家の経営する出版社と貴家の出版社との合併を目論んでおります。そのために我が愚息とのお見合いをアレンジしました」

 思いの丈をぶっちゃけたカスパート男爵の目は、貴族というよりも完全に商人のそれになっていた。

 ところで、愚息というより愚鈍と言うべきなんじゃないか? さっきから見ているとお茶を飲む仕草一つ取っても、モタモタしていて優雅さの欠片もないぞ?

「なるほど。良く分かりました。要するに政略結婚ということですね?」

「まぁ、そういうことになりますな」

「貴家と姻戚関係を結ぶことによって、我が家にどのようなメリットが生じるのかをお教え下さい」

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