253 / 276
253
しおりを挟む
「や、約束...します...」
「よろしい。では明日、あなたも同席することを許可します」
「あ、ありがとう...ございます...」
「用が済んだら下がりなさい」
「は、はい...」
アランが下がった後、入れ違うようにしてカイルが入って来た。
「お嬢様、屋敷の周りは特に異常無しでした」
「そう、お疲れ様。明日もよろしくね?」
「分かりました」
その後、夜になってセバスチャンがやって来た。
「お嬢様、例の『白菊の間』ですが」
「ちょっとセバスチャン、妙な呼称付けないでちょうだいよ...」
「ではなんとお呼びすれば?」
「ハァ...もうなんでもいいわよ...それで?」
私は色々と諦めた。
「取り敢えず長方形のテーブルが見付かりましたんで、部屋の中にテキトーに置いておきました。後はよろしくお願い致します」
「テキトーってあなたね...まぁいいわ...後で見ておくから...」
「それでは私めはこれで」
「あ、セバスチャン。ちょっと待って」
「はい?」
「明日のお見合いの席にアランも同席させることにしたから」
「えっ!? 同席はさせないとおっしゃっておられませんでしたか?」
「アラン本人が同席したいって言って来たのよ」
「それはしかし...」
「相手がどんなに非常識なことをして来ても、決して感情的にならないってことを約束させたから」
「あぁ、なるほど...」
「ただそうは言っても、急に爆発することがあるかも知れない。セバスチャン、申し訳ないけど、アランが暴発しないよう注意していてくれない? 私も気を付けて見ているようにするから」
「畏まりました...」
◇◇◇
今日の仕事を終わらせた私は、セバスチャンが命名した『白菊の間』に足を運んだ。
うん、確かに長方形のテーブルがテキトーに置かれているな...
「フゥ...」
私はため息を一つ吐いた後、ガラガラとテーブルを引き摺って部屋の真ん中辺りに移動した。
そして持って来た花瓶を二つ置いた。次に部屋のそこら中に飾ってある白菊を何本か引っこ抜いて花瓶に挿した。
更にこれまた持って来た両親それぞれの小さな肖像画を、スタンドに立てて花瓶と花瓶の間に設置した。
「良し。これで簡易的な祭壇が完成したな」
出来ればお線香なんかも焚いてみたいところなんだが、それはさすがに今からでは用意できない。だからこれが現時点での精一杯といったところだ。
私は我ながら良い出来だと自画自賛しながら、簡易祭壇を遠くから眺めてみた。うん、悪くないと思う。
後は明日、カスパート家を出迎えるまでだ。私は満足しながら部屋を後にした。
「よろしい。では明日、あなたも同席することを許可します」
「あ、ありがとう...ございます...」
「用が済んだら下がりなさい」
「は、はい...」
アランが下がった後、入れ違うようにしてカイルが入って来た。
「お嬢様、屋敷の周りは特に異常無しでした」
「そう、お疲れ様。明日もよろしくね?」
「分かりました」
その後、夜になってセバスチャンがやって来た。
「お嬢様、例の『白菊の間』ですが」
「ちょっとセバスチャン、妙な呼称付けないでちょうだいよ...」
「ではなんとお呼びすれば?」
「ハァ...もうなんでもいいわよ...それで?」
私は色々と諦めた。
「取り敢えず長方形のテーブルが見付かりましたんで、部屋の中にテキトーに置いておきました。後はよろしくお願い致します」
「テキトーってあなたね...まぁいいわ...後で見ておくから...」
「それでは私めはこれで」
「あ、セバスチャン。ちょっと待って」
「はい?」
「明日のお見合いの席にアランも同席させることにしたから」
「えっ!? 同席はさせないとおっしゃっておられませんでしたか?」
「アラン本人が同席したいって言って来たのよ」
「それはしかし...」
「相手がどんなに非常識なことをして来ても、決して感情的にならないってことを約束させたから」
「あぁ、なるほど...」
「ただそうは言っても、急に爆発することがあるかも知れない。セバスチャン、申し訳ないけど、アランが暴発しないよう注意していてくれない? 私も気を付けて見ているようにするから」
「畏まりました...」
◇◇◇
今日の仕事を終わらせた私は、セバスチャンが命名した『白菊の間』に足を運んだ。
うん、確かに長方形のテーブルがテキトーに置かれているな...
「フゥ...」
私はため息を一つ吐いた後、ガラガラとテーブルを引き摺って部屋の真ん中辺りに移動した。
そして持って来た花瓶を二つ置いた。次に部屋のそこら中に飾ってある白菊を何本か引っこ抜いて花瓶に挿した。
更にこれまた持って来た両親それぞれの小さな肖像画を、スタンドに立てて花瓶と花瓶の間に設置した。
「良し。これで簡易的な祭壇が完成したな」
出来ればお線香なんかも焚いてみたいところなんだが、それはさすがに今からでは用意できない。だからこれが現時点での精一杯といったところだ。
私は我ながら良い出来だと自画自賛しながら、簡易祭壇を遠くから眺めてみた。うん、悪くないと思う。
後は明日、カスパート家を出迎えるまでだ。私は満足しながら部屋を後にした。
23
お気に入りに追加
3,478
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

婚約破棄されました。
まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。
本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。
ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。
習作なので短めの話となります。
恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。
ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。
Copyright©︎2020-まるねこ

悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。
ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」
オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。
「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」
ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。
「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」
「……婚約を解消? なにを言っているの?」
「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」
オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。
「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」
ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる