上 下
252 / 276

252

しおりを挟む
「セバスチャン、長方形の長めのテーブルってあったかしら?」

「あったかも知れません。探してみましょう」

「お願いね?」

「お嬢様、ちなみにどのような用途でお使いになられるのですか?」

「簡易的な祭壇を作っておこうと思って。明日、カスパート家がやって来たら、私は祭壇で祈りを捧げているって体にしようかなと。だからまず、カスパート家をこの部屋に案内してくれない?」

「あぁ、なるほど。それくらいなら問題ないでしょう」

 セバスチャンからOKを貰えた私はホッとした。

「どれだけ常識の無い連中だったとしても、さすがに少しは畏まるでしょうからね」

 どんな反応を見せるのか、ちょっと楽しみでもあったりする。

「あるいはドン引するかのどっちかでしょうね」

「うん、そうなってくれたらしめたもんね」

 私はそう言って部屋を後にした。


◇◇◇


 私が執務室に戻るとアランが部屋に来ていた。

「あ、お嬢...」

 指揮棒ピシッ! ...ってか、いい加減成長しろよな...

「お嬢...様...あの...ありがとうございました...」

「うん? なんのこと?」

 いきなり脈絡もなくお礼を言われた私は面食らった。

「その...カイルに会わせてくれたこと...です...」

「あぁ、それ? うん、きっと会いたがっているかと思って。どうだった? 旧交を温め合ったみたいな感じ?」

 旧交って言うほどは時間が経っている訳でもないけどね。

「えぇ、まぁ...そんなところ...です...」

「そう。良かったわ」

 ちなみにカイルは今、屋敷周りの巡回をしている最中だ。

「あの...それで...明日のお見合いの件...なんですが...」

「うん、どうかした?」

「おれ...じゃなかった...私も同席したい...のですが...」

 そう言われて私はちょっと考えた。当初の予定では感情的になりそうなアランには、部屋の外の警護に回って貰おうと思っていたのだが、今はカイルが付いてくれている。警護の必要はなくなった。

「そうねぇ...同席させてもいいんだけど...ねぇアラン、相手がどんなに失礼なヤツであったとしても、感情的にならず冷静でいられる?」

「え、え~と...」

「それが約束できなきゃ同席は許可できないわ。良い事? 感情的になったら負けなのよ?」

 非常識なヤツらを相手にするには、こっちが理性的になっていないとね。じゃないとヤツらの思う壺になっちゃうからさ。

「ど、努力します...」

「努力じゃダメよ。約束しなさい」

 私はキッパリと言い切った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」 殿下にそう告げられる 「応援いたします」 だって真実の愛ですのよ? 見つける方が奇跡です! 婚約破棄の書類ご用意いたします。 わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。 さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます! なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか… 私の真実の愛とは誠の愛であったのか… 気の迷いであったのでは… 葛藤するが、すでに時遅し…

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

処理中です...