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「却下です」
セバスチャンに一刀両断された。
「だからなんでよ!?」
「由緒あるフィンレイ家を色物化する訳にはいかないからですよ」
セバスチャンには取り付く島もなかった。
「...だったらどうすればいいのよこれ...」
私は白い菊の花に埋め尽くされた部屋を眺めながら途方に暮れていた。
「そんなこと知りませんよ。お嬢様がご自分で蒔いた種なんですから、ご自分で刈り取ったら如何ですか?」
セバスチャンが冷たい。
「ハァ...分かったわよ...ここは亡き両親を追悼するための部屋にするわ...お父様とお母様のでっかい肖像画でも飾りましょうかね...」
「ご勝手になさって下さい。旦那様も奥様もあの世でさぞやビックリなさることでしょうけどね」
「それどういう意味よ!?」
「なにせあの旦那様方が儚くなられた海難事故から、かれこれもう三年は経ちますからね...なんで今頃になって? という思いはきっとございますでしょうよ...」
「うっ...」
痛い所を突かれた私は呻くしかなかった。あの海難事故で両親が急に儚くなった時、悲しみよりも先にこれからどうしようか? と不安になったのを良く覚えている。
まずはこの家を存続させることに必死で、悲しみに浸っている暇なんてなかった。やっと少し落ち着いた頃、両親には立派なお墓を建てて供養したが、その頃にはもう涙は枯れ果てていた。
その後は両親を思い出すこともあんまりなかった気がする。薄情な娘だと思われるだろうが、毎日の忙しさに感けて死者を蔑ろにしていたという訳ではもちろんない。ちゃんと命日には毎年お墓参りしてたし。
でもこうやって在りし日の思い出に浸るような物を作ろうとまでは思わなかった。
私の暴走により、白い菊塗れになってしまった部屋だが、
「うん、良い機会なのかも知れないわね...肖像画だけじゃなく、両親に所縁のある思い出の品なんかも展示することにしましょうか...」
災い転じて福となるじゃないけど、せめて用意した花が無駄にならないよう有効活用してみようかと思ったりしたのだ。
どうせなら本当に祭壇を作ってしまってもいいかも知れないな。
「なるほど...それは良いかも知れませんね...旦那様も奥様もお喜びになられることでしょう...」
セバスチャンが目を細め、両親を懐かしむような表情を浮かべた。セバスチャンは私がこの世に生まれる前から両親に仕えていた。両親への思い入れはひょっとしたら私以上かも知れない。
ともあれ、やっとセバスチャンの機嫌も治ったようで良かった良かった。まぁ結果オーライってことで...
セバスチャンに一刀両断された。
「だからなんでよ!?」
「由緒あるフィンレイ家を色物化する訳にはいかないからですよ」
セバスチャンには取り付く島もなかった。
「...だったらどうすればいいのよこれ...」
私は白い菊の花に埋め尽くされた部屋を眺めながら途方に暮れていた。
「そんなこと知りませんよ。お嬢様がご自分で蒔いた種なんですから、ご自分で刈り取ったら如何ですか?」
セバスチャンが冷たい。
「ハァ...分かったわよ...ここは亡き両親を追悼するための部屋にするわ...お父様とお母様のでっかい肖像画でも飾りましょうかね...」
「ご勝手になさって下さい。旦那様も奥様もあの世でさぞやビックリなさることでしょうけどね」
「それどういう意味よ!?」
「なにせあの旦那様方が儚くなられた海難事故から、かれこれもう三年は経ちますからね...なんで今頃になって? という思いはきっとございますでしょうよ...」
「うっ...」
痛い所を突かれた私は呻くしかなかった。あの海難事故で両親が急に儚くなった時、悲しみよりも先にこれからどうしようか? と不安になったのを良く覚えている。
まずはこの家を存続させることに必死で、悲しみに浸っている暇なんてなかった。やっと少し落ち着いた頃、両親には立派なお墓を建てて供養したが、その頃にはもう涙は枯れ果てていた。
その後は両親を思い出すこともあんまりなかった気がする。薄情な娘だと思われるだろうが、毎日の忙しさに感けて死者を蔑ろにしていたという訳ではもちろんない。ちゃんと命日には毎年お墓参りしてたし。
でもこうやって在りし日の思い出に浸るような物を作ろうとまでは思わなかった。
私の暴走により、白い菊塗れになってしまった部屋だが、
「うん、良い機会なのかも知れないわね...肖像画だけじゃなく、両親に所縁のある思い出の品なんかも展示することにしましょうか...」
災い転じて福となるじゃないけど、せめて用意した花が無駄にならないよう有効活用してみようかと思ったりしたのだ。
どうせなら本当に祭壇を作ってしまってもいいかも知れないな。
「なるほど...それは良いかも知れませんね...旦那様も奥様もお喜びになられることでしょう...」
セバスチャンが目を細め、両親を懐かしむような表情を浮かべた。セバスチャンは私がこの世に生まれる前から両親に仕えていた。両親への思い入れはひょっとしたら私以上かも知れない。
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