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 エリザベートが帰った後、おずおずと言った感じでアランが入って来た。

「あ、あの...お嬢...」

 指揮棒ピシッ!

「お、お嬢様...」

「なあに?」

「え、えっと...そ、その...」

「なによ? ハッキリしないわねぇ...男ならシャキシャキと話しなさい」

「え、え~と...そ、その...つ、つまり...」

「私にお見合いして欲しくないって言いたいんでしょ?」

 アランは無言でコクコクと頷いた。

「安心しなさい。お見合い即婚約とか即結婚ってなる訳じゃないんだから。ただ断り辛いから会うだけは会うってことよ。こういうのが謂わば貴族同士の柵ってヤツね。あなたもこれから貴族になるんだから良く覚えておきなさいな」  

「そ、それはなんとなく理解してるつもりではあるんだけど、やっぱりこう...なんつ~か...釈然としないっつ~か...」  

 再び指揮棒ピシッ!

「しゃ、釈然としないのでありんす!」

「ブフッ! それどこの言葉よ?」

 私は思わず吹き出していた。

「あぅぅ...」

 アランが真っ赤になってしまった。

「そんなに心配ならあなたも同席しなさい」

「えっ!? いい...よろしいのですか!?」

「構わないわ。どうせ相手をウチに呼んでお見合いするつもりだったし。普通にお客様をお出迎えする形で応対しなさいよ」

「わ、分かりました...」

「それじゃこの手紙をサンタンデル伯爵に届けてちょうだいな」

 私はお見合いOKの由を認めた手紙をアランに渡した。

「は、はい...」


◇◇◇


「お嬢様、お手紙が来ております」

 手紙を出した翌々日、セバスチャンが私宛の手紙を持って来た。

「誰から?」

「サンタンデル伯爵様からでございます」

「えっ!? もう!? いくらなんでも早過ぎでしょ!?」

 手紙を出したの一昨日だぞ!? 反応は早いだろうとは思ったけどまさかこんなに早いなんて...まるで待ち構えてたみたいな早さだな...

 私は手紙を受け取り封を開いた。

「これはまた...エラく急いでんのね...」

「お見合いの期日ですか?」

「えぇ」

「いつを指定して来たんです?」

「○月△日だから...」

 私はチラッとカレンダーを確認した。

「明後日ね」

「それはまた...有り得ない早さですね...」

「セバスチャン、悪いんだけどこの『フランクリン・カスパート』って男を早急に調べてくれない? どうにもこうにも胡散臭いのよね。余りにも拙速過ぎるわ。まるで調べられたら困ることがあるみたいな」
 
「畏まりました。肩書きは...男爵令息ですね」 

「そうみたいね。カスパート男爵家なんて聞いたことないわ」

「私もです。とにかく急いで調べてみます」

「お願いね」
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