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「あ、危な~...もうちょっとで流される所だったわ...アンリエット、あなた腕上げたわね...」

「お褒めに預かり光栄の至り」

「だから誰も褒めてねぇし...」

「エリザベート、あんまりカリカリするとお腹の子に障るわよ?」

「誰のせいよ...誰の...」

 エリザベートが恨みがましく私を睨み付けた時、

「お嬢様、失礼致します」

 アランが恭しく部屋に入って来た。

「あれ? アランじゃない? なんなのその口調?」

「え、え~と...そ、それは...」

 アランが困ったような顔で私を見る。しょうがないな。説明してやるか。

「エリザベートの所で受けていた貴族教育の続きよ。まずは原点に立ち返って執事見習いの修行から再スタートしたってこと」

「あぁ、そう言えば最初の頃のアランって全然執事らしくなかったもんね」

「でしょう? セバスチャンが厳しく躾てくれたお陰で、多少は見れるようになってたんだけど、領地に行ってからは私が甘やかしたせいもあって元に戻っちゃったのよ。だから最初っからやり直してるって訳」

「なるほどね。うん、良いと思うわ。大分姿勢が良くなったんじゃない? ウチに来た当初なんかそれはもう目も当てられないくらい酷かったもんね」

「ハハハ...」

 思い出したのかアランが苦笑している。

「ねぇアラン、あなたからもご主人様に言ってやってちょうだいよ?」

 エリザベートは矛先をアランに変更したらしい。

「えっ!? なにを!?」

「ご主人様ったら実の兄の結婚式に出ないって言い張ってんのよ? どう考えたっておかしいでしょう? 有り得ないでしょう?」

「それは確かに...」

「だからあなたからも説得してちょうだいよ?」

「お嬢...まだそんなこと言ってんの?」

「まだもなにもずっと言い続けるけど?」

「ハァ...駄々捏ねる子供じゃないんだからさ...いい加減大人になりなよ...」

 その言い方にカチンと来た。どこが腹立つかって言えばまずはその上から目線だ。なにが悲しゅうてアラン如きに人生を悟らせられにゃならんのだ。

 アランの隣で「いいぞ! もっと言ってやれ!」みたいな顔してるエリザベートにもムカつくが、

「色々と言いたいことはあるけどその前に」

 バシイッ!

 まずはアランを指揮棒でぶっ叩いた。

「痛っ!」

「口調が元に戻ってんのよ」

「あぅぅ...も、申し訳ございません、お嬢様...」

「アンリエット...あなた...」

「なによ?」

 さすがにビックリしたのか、エリザベートの目が点になった。

「ご主人様じゃなくて女王様だったのね...」

「喧しいわ!」

 人に変な属性付んじゃねぇ!
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