我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「ともあれ、あなたには今日から通常業務に戻ってもらうから。そのつもりで」

「あぁ、それは非常に助かるよ...」

 アランはあからさまにホッとしたような表情を浮かべたが、安心するのはまだ早いんだけどね。

「とは言っても、貴族教育は継続して行くつもりだから。そこんとこヨロシク」

「えぇ~!? なんでぇ~!?」

「私が後を引き継いだからよ。そのためにエリザベートの屋敷で行っていたことの詳細を知っておく必要があったの」

「そういうことだったのかよ...」

 アランが今度はこの世の終わりを迎えたような表情になっちゃったんで、

「心配しなさんな。私はスパルタする気はないから。教育も通常業務に影響が出ない範囲で行うつもりだから」

「でも教育自体はやるんだね...」

 アランはちょっとだけ安心したような雰囲気を浮かべたが、まだ表情は暗いままだった。

「そりゃ当然っしょ。立派な貴族になって貰わなきゃなんだから」

「俺がなれるのかなぁ...」

「きっと大丈夫よ。自信持ちなさい」

 私はバンッとアランの背中を叩いて気合いを入れた。

「ハァ...」

 アランはなんとも言えないといった表情を浮かべてため息を吐いていた。


◇◇◇


「お嬢~ お茶が入ったよ~ 少し休憩しなよ~」

「......」

「お嬢? どしたん?」

「アラン、やり直し」

「へっ!?」

「まずは執事の修行時代に立ち返りなさい」

「え~と...お嬢様、お茶が入りました...」

「そう、それでいいのよ。執事の言葉遣いや所作なんかは貴族の振る舞いに直結する部分もあるから。まずはそこら辺から始めて行きましょうか」

「ハァ...」

「ほら、背筋が曲がってる!」

 バシイッ!

「痛っ!」

 そりゃ痛いだろう。なにせ殴ったのは指揮棒だったんだから。

「お、お嬢!? な、なにそれ!?」

 アランが涙目になって尋ねる。

「ムチが手元になかったから、取り敢えず代用してみたの。昔、ウチの屋敷にオーケストラを呼んで演奏会を開いたことがあってね。その時の指揮者の人から記念に貰ったものなのよ。これいいわよね。人を殴るのに最適だわ」

「す、スパルタはしないってお嬢言ってたよね!?」

「あら? こんなの可愛いもんじゃない? スパルタの内にも入らないわよ?」

「う、ウソでしょ!?」

「それよりもまた言葉遣いが元に戻ってたわよね?」

「へっ!?」

「『お嬢』って二回言ったから二発ね♪ 覚悟~♪」

 バシイッ! バシイッ!

「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ! お、お助け~!」

 その日は一日中、アランの悲鳴が木霊していたとかいないとか。

 チャンチャン♪
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