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 次の日、ようやく少し元気を取り戻したアランから、エリザベートの家で受けていた貴族教育の内容の詳細を聞くことにした。

「まずはテーブルマナーの教育。音を立てずに優雅に食すること。朝食の席から夕食の席まで、常に監視の目が付いてるもんだからさ...味なんか分からなくて食べた気がしなかったよ...なにせちょっとでも音を立てるとムチが飛んで来るんだから...」

「あぁ、それで窶れたのね...」

 私は心から同情した。

「次に姿勢の矯正。常に背筋を伸ばしている状態をキープするために、頭の上に本を載せられたっけ...それを落とさないようにゆっくり歩いたりお茶を飲んだりと...これまた本を落とす度にムチが飛んで来て...」

「あぁ、その訓練は私もやったわ...あれキツイのよね...背筋を曲げられないように、背中に長い定規を差し込まれたこともあったっけ...」

 私は遠い目をした。

「次に貴族としての一般教養の詰め込み。茶葉の種類や花言葉や宝石の種類なんかの丸暗記。国内の貴族の相関図や国際情勢の把握などなど...一日の終わりにテストを受けてね...赤点だとムチ打ちの刑に加え食事抜き...」

「うわぉ...凄いスパルタ...」

 私でもごめん被りたいわぁ...

「次にダンスレッスン。これはエリザベート嬢自らが講師になってくれたんだが...とにかくパワフルなんで振り回されっぱなし...間違って足を踏もうもんなら倍になって返って来る...レッスンが終わる頃には全身筋肉痛...特に足は産まれ立ての小鹿状態...」

「うわぁ~...その光景が目に浮かぶようだわぁ~...」

 体力お化けのエリザベートに付いて行くのは常人にゃ無理だよねぇ...

「最後に実践。毎晩のように舞踏会だの夜会だのに連れ回されて、ダンスを披露させられたり貴族としての付き合い方や貴族特有の独特なトーク術をレクチャーされたりと...ホント、ここ一ヶ月は身も心も休まる暇がなかったよ...」

「なんと言うか...その...お疲れ様...」

 私はそう言うしかなかった。

「あ、そう言えばさ。俺が帰る直前くらいだったかな? エリザベート嬢がロバート様を小脇に抱えて連れ帰って来てたけど、あれって一体なんだったの?」

「我が兄はそんな扱いだったのか...」

 嫁が小脇に抱える夫って一体...

「兄のことは気にしないで。元から居なかったものとして扱っていいわ」

「はぁ...」

 アランは曖昧に頷くのみだった。そりゃ無理もないわな...
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