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215 (第三者視点6)

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「...所長さん、マーガレットはこのまま入院させて貰って構いませんか?」

「はい、問題ありません」

「...回復の見込みはあるのでしょうか?」

「体の方は直に良くなります。ただし、心の方は今の段階ではなんとも言えません...」

「...そうですか...」

 パトリックは暗い顔で頷いた後、やや躊躇いがちに問い掛けた。

「...ちなみに入院費用は幾らぐらいになりますか?」

「あぁ、そちらは既にハンスさんの方から前払いでお支払い頂いておりますのでご心配なく」

「...そうですか...ではまた近い内にお見舞いに来ることにします...」

「はい、お待ちしております」


◇◇◇


「...パトリック...その...なんて言ったらいいのか...」

 帰りの馬車の中でアランが遠慮がちに声を掛ける。それに対してパトリックはわざと話題を変えた。

「...アンリエットには借りが溜まる一方だな...本当に頭が上がらない...これから少しずつ返して行くことにするよ...一生掛かっても返し切れないかも知れないけどな...ハハハ...」

 そう言って力なく笑うパトリックを、アランは痛ましい者を見るような目で見詰めるしかなかった。

「...パトリック...」

「...大丈夫...分かってる...分かってるから...」

 パトリックは自分自身に言い聞かせるように顔を伏せながら小さく呟いた。そんなパトリックにアランは掛ける言葉が見付からなかった。

「...アラン、頼みがある...」

 ややあってパトリックが顔を上げた。

「...なんだ?」

「...今日のこと、マックスには内緒にしてくれないか? もちろんウィリアムにも...」

「...パトリック、それって...」

 アランはビックリしてパトリックを二度見した。

「...あぁ、全て俺が背負う...それがマーガレットに対するせめてもの罪滅ぼしになると思う...」

「...お前さんがそこまで責任を負う必要があるのか?」

「...これは俺の罪だ...一生掛けて償うべき罪だ...そして墓場まで持って行く罪でもあると思う...だから俺はこれからもマックスの父親として、アイツをしっかりと育てて行くつもりだ...」

「...そうか...お前さんがそこまで覚悟を決めているっていうなら、俺はもうなにも言わんよ...応援するからな...頑張れ...」

「...ありがとう...」

 そう言ってアランはゆっくりと目を閉じた。そこからは二人とも無言のまま帰路に就いた。



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