我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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210 (第三者視点)

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 次の日、アランはパトリックを連れて元ヘンダーソン家の元領地に向かった。

 マックスはウィリアムが預かるという。アンリエットは執務室で業務に就きながら、行く末を案じていた。

「アンリエット、ちょっといい?」

 午後になってエリザベートがやって来た。

「なに?」

「一旦、家に戻るわね。いい加減そろそろヤバそうだから」

「そりゃそうだろ...寧ろ今頃気付いたのが遅過ぎだわ...」

 アンリエットは呆れ顔を浮かべた。

「あれ? アランは?」

 エリザベートが部屋を見渡して首を捻った。

「あぁ、今ちょっと仕事で外に出てるのよ」

「そう。よろしく言っといて?」

「はいはい...」

 エリザベートが部屋を出て行ったのと入れ替わりに、まるで幽鬼のようにフラフラとした足取りでロバートが入って来た。

「あら、兄さん? 生きてたのね?」

 アンリエットは容赦ない。

「...ハハハ...」

 ロバートは力無く笑うのみだった。

「兄さん、覚悟決めなさいよ? こうなった以上、責任取るのは男の義務だからね?」

「...あぁ、分かってるよ...」

 アンリエットの厳しい言葉に、ロバートは重々しく頷いた。

「ウチのことは心配しないで。また私が跡を継ぐから」

「...済まないな...お前にばっかり苦労掛けて...」

「全くよ...もう勘弁して欲しいわ...ホント男って生き物はどうしようもないんだから...」

 アンリエットはしみじみとそう呟いた。

「...返す言葉もない...」

 ロバートは俯いてしまった。

「あ、それで思い出したんだが、お前とアランってその...そういう関係なのか?」

「...ノーコメントで...」

 今度はアンリエットが俯いてしまった。


◇◇◇


 一方その頃、マーガレットの元へ向かう馬車の中では、

「なぁ、アラン...やっぱり子供には母親が必要だと思うか?」

 パトリックとアランが話し合っていた。

「さあな、俺は孤児だったから」

「そうなのか?」

 パトリックが目を剥いた。

「あぁ、親の顔も知らない」

「それは...済まなかった...」

 パトリックは申し訳無さで一杯になった。

「別にいいさ。過ぎたことだ。気にしちゃいない」

 アランは遠い目をした。

「俺からなにか言うとすれば、親はなくても子は育つってことだな」

「なるほど...」

「だがそれはあくまでも俺の場合だ。今のマックスには母親が必要だと思う」

 アンリエットのことをママと呼んでいたマックスの顔が、アランの頭の中には思い浮かんでいた。

「そうか...」

 パトリックは重々しく頷いた。

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