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「これは...」
アランが絶句してしまった。
「どうすれば良いと思う?」
「う~ん...ゴメン...俺じゃ判断できないわ...」
「謝らなくていいのよ。私も同じ気持ちだから。なんでまた今になって...」
ハンスからの手紙にはこう書かれていた。
『マーガレットが見付かった』
◇◇◇
経緯はこういうことらしい。
三日前の未明、国に差し押さえられたヘンダーソン家の別荘に、一人の女が訪ねて来た。女の身なりはボロボロで明らかにホームレス風だったのだが、自分はこの別荘に住んでいるのだと言い張ったらしい。
そしてパトリックとマックスの名前を連呼し、二人に会わせろと騒ぎ出したそうだ。
別荘を管理している国の役人が取り押さえたが、女はどうも錯乱しているようで意味不明なことをずっと口走っているらしい。
どうしたら良いものかと、パトリック達の捜査に協力したハンスの元に連絡が来たそうだ。
ようやくパトリックの件が片付き、彼らも新しい道を進もうとしている矢先に現れたマックスの母親。波乱の予感しかしない。
「まぁでも、黙ってる訳にもいかないわよね...アラン、悪いんだけどパトリック達を呼んで来て貰える?」
「分かった...」
◇◇◇
「アンリエット! 本当なのか!? マーガレットが見付かったって!?」
約30分後、パトリックが大慌てで駆け付けて来た。私は無言でハンスの手紙を渡す。
「なんてことだ...」
手紙を読んだパトリックは頭を抱えた。
「マーガレットは国の保護施設に入れられてるそうよ。錯乱しているみたいだけど会いに行ってみる?」
「無論だ。どんな状態になっていたって、あいつはマックスの母親なんだからな」
「今日、マックスは? 一緒じゃないみたいだけど?」
「ウィリアムのヤツが見ててくれている」
「マックスにはこのことを?」
「いや...まだ話してない...」
「そう。じゃあ先にあなただけが会ってみるのね?」
「あぁ、まずはどういう状態か会ってから判断しようと思う。あんまり酷いようならマックスには会わせないつもりだ」
「可哀想だけどその方が良いかも知れないわね。アラン、悪いんだけどパトリックを連れて行ってあげて?」
「あいよ」
「いや、そこまで迷惑を掛ける訳には...」
「パトリック、忘れたの? あなたには前科があるのよ? 一人でなんか行かせられないわよ」
「あぁ、そうだった...済まない...アラン、よろしく頼むよ...」
「今度は逃げたりするんじゃねぇぞ?」
「もちろんだ...信じてくれ...」
アランが絶句してしまった。
「どうすれば良いと思う?」
「う~ん...ゴメン...俺じゃ判断できないわ...」
「謝らなくていいのよ。私も同じ気持ちだから。なんでまた今になって...」
ハンスからの手紙にはこう書かれていた。
『マーガレットが見付かった』
◇◇◇
経緯はこういうことらしい。
三日前の未明、国に差し押さえられたヘンダーソン家の別荘に、一人の女が訪ねて来た。女の身なりはボロボロで明らかにホームレス風だったのだが、自分はこの別荘に住んでいるのだと言い張ったらしい。
そしてパトリックとマックスの名前を連呼し、二人に会わせろと騒ぎ出したそうだ。
別荘を管理している国の役人が取り押さえたが、女はどうも錯乱しているようで意味不明なことをずっと口走っているらしい。
どうしたら良いものかと、パトリック達の捜査に協力したハンスの元に連絡が来たそうだ。
ようやくパトリックの件が片付き、彼らも新しい道を進もうとしている矢先に現れたマックスの母親。波乱の予感しかしない。
「まぁでも、黙ってる訳にもいかないわよね...アラン、悪いんだけどパトリック達を呼んで来て貰える?」
「分かった...」
◇◇◇
「アンリエット! 本当なのか!? マーガレットが見付かったって!?」
約30分後、パトリックが大慌てで駆け付けて来た。私は無言でハンスの手紙を渡す。
「なんてことだ...」
手紙を読んだパトリックは頭を抱えた。
「マーガレットは国の保護施設に入れられてるそうよ。錯乱しているみたいだけど会いに行ってみる?」
「無論だ。どんな状態になっていたって、あいつはマックスの母親なんだからな」
「今日、マックスは? 一緒じゃないみたいだけど?」
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「マックスにはこのことを?」
「いや...まだ話してない...」
「そう。じゃあ先にあなただけが会ってみるのね?」
「あぁ、まずはどういう状態か会ってから判断しようと思う。あんまり酷いようならマックスには会わせないつもりだ」
「可哀想だけどその方が良いかも知れないわね。アラン、悪いんだけどパトリックを連れて行ってあげて?」
「あいよ」
「いや、そこまで迷惑を掛ける訳には...」
「パトリック、忘れたの? あなたには前科があるのよ? 一人でなんか行かせられないわよ」
「あぁ、そうだった...済まない...アラン、よろしく頼むよ...」
「今度は逃げたりするんじゃねぇぞ?」
「もちろんだ...信じてくれ...」
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