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「恐らくだけど、パトリックの情状酌量は認められると思う。ウィリアムもしっかり擁護するって約束したし」

「あぁ、その件に関してはウチからも根回ししておいたわ。きっと国からの出頭要請を拒んだだけの軽い罪で済むはずよ」

「そうだったんだ。さすがお嬢」

「誉めてもなんも出ないわよ? それで? マックスはどう? 長旅で疲れたりしてない?」

「あぁ、問題ない。父親に会えたことで元気一杯になってる」

「そう、良かったわ...子供にはなんの罪もないものね...」

「だな。あ、そうだ。パトリックのヤツはちゃんと罪を償ったら、お嬢の所に正式にお詫びに伺いたいって言ってた」

「そう。別に構わないわ」

「それとあいつらの仕事の件なんだけど...」

「あぁ、ウィリアムを紹介しようと思っていた職場に話してみるわ。もう一人くらいなんとか捩じ込めるでしょう」

「ありがとう...助かるよ...パトリックのヤツも今回の件でかなり憔悴し切ってるみたいなんで、今だったらどんな仕事でも精一杯努めると思うんだ」

「えぇ、そう願うわ」

「さて、次はウチが抱える厄介な件に関してだけど」

「ハンスからどの程度聞いてる?」

「おおざっぱに聞いただけ。ヤバいヤツに目を付けられたって」

「大体合ってるわ。それで今、エリザベートが動いてくれてるの」

「エリザベート嬢が?」

 私はエリザベートとのやり取りを大まかに説明した。

「なるほど...後見ね...寄親に寄子か...なんだかピンと来ないけど...」

「まぁ貴族間のことだからね。アランは馴染みがなくて当然よ」

「そうだよな...」

「でも、アランもこれから貴族になるのなら、今の内にこういったことに慣れておいても損はないわよ?」

「うん...うん!?」

 そこまで言って自分でもハッと気付いた。途端に仕事モードが解除された私は、頬が熱を帯び始めたのを自覚した。

 それはアランも同じだったようで、私達はお互い気不味くなって視線を逸らせた。

「ヒューヒュー♪ お二人さん、熱い熱い~♪ ヒューヒューだよ~♪」

 そこへ満面の笑みを浮かべたエリザベートが乱入して来やがった!

「エリザベート、うっさい! ってか、なんでまたウチに来てんのよ! ここはお前の家じゃねぇんたぞ!」

「まぁまぁ♪ いいじゃない別に♪ もうすぐ私の夫の実家になるんだし♪」

「サラッと夫とか言ってんじゃねぇよ!」

 私とエリザベートとのやり取りを、アランはポカンとした顔で眺めていたが、私には説明している余裕がなかった。
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