我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「とまぁ、そういう訳だから」

「話がキレイに纏まったみたいに言ってんじゃねぇよ...」

 すっかり疲れ切った私は、怒鳴る気力もなくなっていた。

「とにかく、ランドルフ侯爵家からなにか言って来たら、すぐ私に知らせなさい。特にお見合いの日付とかね」

「聞いてどうすんのよ?」

「そりゃ同席するに決まってんじゃないのよ。寄親として当然の義務でしょ?」

「確かに...そうしてくれたら心強いけど...」

 正直、侯爵家を相手にすんのは胃が痛くなるなって思ってたからね。

「でも本当にいいの? 後でなんか問題になったりしない?」

「心配しないで。なにも問題ないわよ。フフフ、お見合いの席であの狸親父が目を丸くする光景が目に浮かぶようだわぁ。さぞや痛快でしょうねぇ」

「狸なんだ...」

「えぇ、そうよ。頭の中も腹の中も外見もね」

「外見も?」

「あら? アンリエットは見たことなかったかしら?」

「えぇ、お会いしたこともお姿を拝見したこともないわね」

「とにかく真ん丸よ。真ん丸。ブクブクと醜く肥えてて横にも縦にも広がってるわ。見たらきっと吹き出すわよ?」

「真ん丸...」

 私は想像しようとしたが難しかった。

「じゃそういうことで。また来るわね。スイートハートにくれぐれもヨロシク♪ お大事にって伝えておいてねん♪」

「はいはい...」

 私はもう突っ込む気力もなくなっていた。


◇◇◇


 三日後、アランが戻って来た。

「お嬢、ただいま」

「お帰り、アラン。無事で良かったわ」

 お互い仕事モードなのでギクシャクした感じはない。今はそれがありがたかったし、ちょっと懐かしく思ったりもした。

「それで首尾は?」

「あぁ、まさかとは思ったけど、パトリックのヤツは隣国の王都に居たよ」

「見付かったの!?」

 私は目を剥いた。

「運良くね」

「それで!?」

「パトリックは頼って行った隣国の貴族に騙されて身ぐるみ剥がされたらしい。そして王都に放り出された」

「あぁ、だから王都から手紙を出したのね...」 

「そういうこと。そこからはその日暮らしのような生活をしていたんだそうだ」

「それはまた...自業自得とはいえ大変な目に遭ったのね...」

「あぁ、ウィリアムのヤツが見付けた時には酷い格好だったよ」

「そうだったのね...」

 私はほんのちょっぴりだけ同情した。

「最初は渋ってたんだが、ウィリアムが説得した結果、帰国することに同意したよ。マックスのためってのも効いたんだろうけどね」

「でも帰国したら...」

「本人はちゃんと罪を償うってさ」

「そう...なら私からはなにも言うことはないわね...ご苦労様」

「どういたしまして」
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