我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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187 (第三者視点5)

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 翌日、アランは裏通りへ、ウィリアムはマックスを連れて動物園へと向かう予定だ。

「アラン、くれぐれも気を付けてな」

「あぁ、そっちは楽しんで来い」

 ウィリアムと別れたアランは、裏通りのとある雑居ビルの一室を訪れていた。

「よう。あんたが情報屋だな?」

「お前さんが依頼主か。話は聞いてる。探してんのは貴族のボンボンだって話だったな。だが昨日の今日でそんなすぐ情報が出る訳ねぇだろ。まだなんも情報は無ぇよ。大人しく帰んな。こっちも暇じゃねぇんだ」

 アランは既にこの町の情報屋とコンタクトを取っていた。

「まぁそう言うなよ。景気はどうだ?」

「良くも悪くもねぇな」

「これで少しは良くなるか?」

 そう言ってアランは情報屋の手に金貨を押し付けた。

「だから情報はまだ無ぇって言ってんだろ? 受け取れねぇよ」

「なんだ...本当だったのか...」

 てっきり駆け引きの一種だと思い込んでいたアランは拍子抜けしてしまった。

「そもそもどっかの貴族のボンボンが、こんな汚ねぇ裏路地をフラフラ彷徨いてる訳がねぇじゃねぇか」

「いや、落ちぶれた元貴族なんだが」

「それでもだ。貴族って連中はプライドだけは高ぇからな。どんなに落ちぶれたってこんな掃き溜めみてぇな所になんざ来やしねぇよ。お門違いだ。他を当たんな」

「犯罪者として追われてるとしてもか?」

「なに!? それは本当か!?」

「あぁ、ウチの国で罪を犯してこの国に逃げて来たんだ」

 実際のところ、パトリック自身はなにも罪を犯してはいないのだが、国からの呼び出しに応じず逃げ出したのは間違いではないので、犯罪者ということにしている。ただ、情報屋にはそこら辺の事情まで詳しく言う必要はないだろう。

「なるほどな...つまりお前さんは国を跨いだ犯罪を取り締まる特別捜査官ってところか」

「まぁそんなもんだ」

 全く違うのだが、アランは適当に合わせておくことにした。

「だが俺の正体はくれぐれも秘密にしてくれよ? 隠密行動が基本なんだからな」
  
「あぁ、心得てるよ。心配すんな。秘密は漏らさねぇよ」

「それじゃ引き続きよろしく頼む。情報を掴んだらすぐに知らせてくれ。俺はこのホテルに泊まってるから」

 そう言ってアランは情報屋にメモを渡した。

「あぁ、分かった」 

「それと、この辺りで流れ者が屯しているような場所はどこかあるか?」

「あぁ、それなら港近辺だな。船の荷揚げなどの力仕事で日雇いの職にありつけるからな」

「なるほど。分かった。行ってみよう」

 情報屋と別れたアランは、言われた通り港に向かった。
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