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186 (第三者視点4)

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 隣国バルバロッサの王都ブリスペンに着いて二日目。

 朝食の席でウィリアムがアランに尋ねた。

「アラン、今日はどうするんだ?」

「裏通りに行ってみる」

「裏通り?」

 ウィリアムは首を傾げた。

「あぁ、どんな町にだって表がありゃ裏の部分ってのもあるもんだからな。表裏一体ってヤツだ。実際、裏ルートの方が情報は確かだったりするもんなんだよ。表の部分には昨日尋ね人の新聞広告を出したから、今日は裏の情報を収集してみようと思ってる」

「だ、大丈夫なのか!? や、ヤバくないのか!?」

 ウィリアムは心配気にそう言った。

「確かにヤバい場合もある。だから子供連れなんか論外だ。お前さんは連れて行かない」

「いやマックスにはベビーシッターを付けるつもりでいるんだが...」

「それでもダメだ。俺は多少の荒事には慣れてるが、お前さんはそうじゃないだろう? 危ない目に遭ったらどうする? だから連れて行かない」

「じゃ、じゃあ俺はなにをすれば?」

「王都の観光地巡りをして来い」

「観光!? そんな呑気な!」

 ウィリアムは目を剥いた。

「まぁ聞けって。パトリックのヤツが王都に住んでるなら話は別だが、もしかしたら手紙を出すついでに観光しに来たのかも知れないだろ? だとしたら、観光地でバッタリなんて可能性も無きにしも非ずとは思わないか?」

「いやいや、さすがにそれは無いだろうよ...」

 ウィリアムは頭を振った。

「いいからいいから。マックスと二人で仲良く楽しんで来いよ」

「アラン...」

 あぁ、そういうことだったのかとウィリアムは納得した。アランはウィリアムとマックスを人探しに連れ歩くつもりは最初っから無く、ウィリアムにマックスとの思い出作りをさせようとしているのか。

「済まん...」

 アランの優しい気持ちを理解したウィリアムは、そうポツリと呟くしか出来なかった。

「なんに謝っているんだか分からんな」

 アランはわざとそっぽを向いて素っ気ないフリをした。


◇◇◇


「お帰り」

 その日、夜遅くなってアランがホテルに戻って来た。

「どうだった?」

「ダメだ。収穫無しだ」

「そうか...」

「そっちは?」

「お陰様で楽しませて貰ったよ。今日は遊園地にマックスと一緒に行った」

「そうか。楽しそうでなによりだ。新聞広告になんか反応はあったか?」

「今んとこまだなにも」

「まぁ昨日の今日じゃそんなもんか」

「明日はどうする?」

「引き続き裏の情報に当たってみる。お前さんは」

「分かってる。明日は動物園に行くつもりだ」
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