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185 (第三者視点3)
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一方その頃。
アランとウィリアム達は隣国バルバロッサの王都ブリスペンに到着していた。
「フゥ...やっと着いたな...」
三日間に渡る馬車の旅を終え、ブリスペンの地に降り立ったアランは、凝り固まった体を伸ばして深呼吸した。
「さすがに隣国は広いよな。確か面積は我が国の二倍以上あるんだったっけ?」
「あぁ、そんなところだ」
ウィリアムはマックスを抱き上げて馬車から降ろしながらそう答えた。
「これからどうする?」
マックスをあやしながらウィリアムが問い掛ける。
「そうだな...まずは正攻法で行ってみるか」
「正攻法?」
「あぁ、なにせ初めて来た町だからな。勝手も分からんし、どこを探せばいいのやら皆目見当も付かん。だからまずは、新聞に尋ね人の広告出してみることにする」
「なるほど...」
ウィリアムは納得したように頷いた。
「ウィリアム、お前さんはまず宿を取ってマックスをゆっくり休ませてやれ。長旅で疲れてるだろう」
「あぁ、分かった。アランはどうするんだ?」
「俺は新聞社に行って来る」
「そうか...その...体の方は大丈夫なのか?」
ウィリアムは申し訳無さそうに尋ねた。
「あぁ、三日もノンビリしたからな。もう心配ない」
「良かった...それじゃあ俺達はあそこに見える大きなホテルに宿を取ることにする。後で落ち合おう」
「あぁ、分かった」
こうしてアランとウィリアムは一旦二手に分かれることになった。
◇◇◇
同時刻。執務室で仕事をしていたアンリエットは、
「エリザベート...仕事の邪魔するんだったら出て行ってくんない?」
「邪魔なんかしてないじゃん」
「ムカつくからそのニマニマした笑いを今すぐ止めろ...」
「あら~♪ これは失敬~♪」
すっかりエリザベートのオモチャにされ辟易していた。
「ハァ...ねぇ、アンタ暇なの?」
「失礼ね! これでも公爵家の跡取りなんだから分刻みのスケジュールだっての!」
「その割りには茶をしばいているようにしか見えないけど...」
「失敬ね! これでも頭の中はフル回転してんのよ!」
「あぁ、そうですか...なに考えてんだか知らないけど...知りたくもないけど...とにかく、どうでもいいから他所でやってくんない?」
「はいはい♪」
アンリエットはエリザベートが出て行ったドアを見詰めながら、すっかり冷え切ったお茶を一気に飲み干して、
「フゥ...」
特大のため息を一つ吐いた。
「アラン...」
そして隣国へと旅立ったアランを思い、遠い目で窓の外を見上げたのだった。
アランとウィリアム達は隣国バルバロッサの王都ブリスペンに到着していた。
「フゥ...やっと着いたな...」
三日間に渡る馬車の旅を終え、ブリスペンの地に降り立ったアランは、凝り固まった体を伸ばして深呼吸した。
「さすがに隣国は広いよな。確か面積は我が国の二倍以上あるんだったっけ?」
「あぁ、そんなところだ」
ウィリアムはマックスを抱き上げて馬車から降ろしながらそう答えた。
「これからどうする?」
マックスをあやしながらウィリアムが問い掛ける。
「そうだな...まずは正攻法で行ってみるか」
「正攻法?」
「あぁ、なにせ初めて来た町だからな。勝手も分からんし、どこを探せばいいのやら皆目見当も付かん。だからまずは、新聞に尋ね人の広告出してみることにする」
「なるほど...」
ウィリアムは納得したように頷いた。
「ウィリアム、お前さんはまず宿を取ってマックスをゆっくり休ませてやれ。長旅で疲れてるだろう」
「あぁ、分かった。アランはどうするんだ?」
「俺は新聞社に行って来る」
「そうか...その...体の方は大丈夫なのか?」
ウィリアムは申し訳無さそうに尋ねた。
「あぁ、三日もノンビリしたからな。もう心配ない」
「良かった...それじゃあ俺達はあそこに見える大きなホテルに宿を取ることにする。後で落ち合おう」
「あぁ、分かった」
こうしてアランとウィリアムは一旦二手に分かれることになった。
◇◇◇
同時刻。執務室で仕事をしていたアンリエットは、
「エリザベート...仕事の邪魔するんだったら出て行ってくんない?」
「邪魔なんかしてないじゃん」
「ムカつくからそのニマニマした笑いを今すぐ止めろ...」
「あら~♪ これは失敬~♪」
すっかりエリザベートのオモチャにされ辟易していた。
「ハァ...ねぇ、アンタ暇なの?」
「失礼ね! これでも公爵家の跡取りなんだから分刻みのスケジュールだっての!」
「その割りには茶をしばいているようにしか見えないけど...」
「失敬ね! これでも頭の中はフル回転してんのよ!」
「あぁ、そうですか...なに考えてんだか知らないけど...知りたくもないけど...とにかく、どうでもいいから他所でやってくんない?」
「はいはい♪」
アンリエットはエリザベートが出て行ったドアを見詰めながら、すっかり冷え切ったお茶を一気に飲み干して、
「フゥ...」
特大のため息を一つ吐いた。
「アラン...」
そして隣国へと旅立ったアランを思い、遠い目で窓の外を見上げたのだった。
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