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 しばらく経ってからウィリアムは戻って来たが、その後ろから足を引き摺るようにしてアランも一緒にやって来た。

「アラン! 安静にしてなきゃダメじゃないの!」

 仕事モードだった私は、アランの姿を見ても特に意識することなく普通に接せられた。それはアランの方も同じようだった。

「寝てなんかいられねぇよ! 俺も一緒に行く!」

「そんな体でなに言ってんのよ! 許可できる訳ないじゃないの!」

「だったら勝手に行く! 止めたって無駄だ!」

「もう! なんだってそんなに頑固なのよ!」

「これはケジメだ! パトリックの野郎を一発ぶん殴ってやらねぇと気が済まねぇ! ふざけやがって! なにが後は頼むだ!」

 どうやらパトリックが送って来た手紙を見て怒り心頭らしい。

「全くもう...男って生き物はなんでこうも単細胞なのよ...」

 一歩も引く様子のないアランの様子に、私は頭を抱えるしかなかった。

「アンリエット...本当にゴメン...」

 アランの隣でウィリアムは申し訳無さそうに小さくなっていた。

「フゥ...だったらもう勝手にしなさい...その代わり...必ず無事に帰って来んのよ...分かった?」

「あぁ、もちろん!...お嬢...その...済まねぇ...」

「済まないと思ってんなら思い直して欲しいんだけど...」

「それも出来ない。全てはあの日、俺がパトリックに出し抜かれたことが原因なんだからな...」

「そのことに関しては気にしなくていいって言ったのに...」

「そういう訳にはいかない。これは男としてのプライドの問題だ」

「ホントにもう...男っていう生き物はマジで理解不能だわ...」

 私が本日二度目の男批判を行った時、ウィリアムがおずおずと割り込んで来た。

「アンリエット...俺じゃ頼りになんないかも知んないけど...アランのことは出来るだけ守るから...その...安心...は出来ないかも知んないけど、少しは肩の荷を下ろしてくれ...」

「バカにすんなウィリアム! 自分の身くらい自分で守れらぁ!」

 そう言って強がるアランの背中を、私はちょっと小突いてみた。

「あ痛っ! お嬢! なにすんだよ!」

「ハァ...ウィリアム、くれぐれもよろしくね...どうやらあなただけが頼りみたいだわ...」

「あぁ、分かった。任せてくれ」

「お嬢! なんかその言い方傷付くんだけど!」

「実際あんた傷だらけじゃないのよ...」

 私は呆れ顔でアランを見やった。

 送り出すことは不安でしかないが、こうなった以上は無事を祈るしかなかった。


 
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