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 そもそも子供を置いてきぼりにして、アランを出し抜いた時点で既にパトリックは確信犯だった訳だが、敢えてそのことには触れないでおいた。
 
 ウィリアムはしばし黙考した後、

「...それでもやっぱり...俺としてはマックスを父親に会わせてあげたい...恐らく会いに行っても拒絶されるだけだと思うが...だがそれならそれでマックスも諦めが付くと思うんだ...」

「例えそのことでマックスが心に傷を負うとしても?」

「...あぁ、必要なことだと思う...」

「あの歳でそんな体験するのはかなりキツいと思うわよ?」

「...その時は俺が全力で支えるさ。これでも肉親の端くれだからな...」

 そう言ったウィリアムの目は決意に満ちていた。

「そう...分かったわ。それだけの覚悟があるならもうなにも言わない。頑張ってね」

「...ありがとう...それでアンリエット、出来れば今すぐ発ちたいんだが...可能性は低いだろうけど、隣国の王都で兄貴を捕まえられるかも知れないし...」

 私はちょっと考えた後、

「それはちょっとお勧め出来ないわね。子供連れて人探しなんて難しいと思うわよ? 隣国には行ったこと無いけど、王都っていうくらいだからきっと広いんだろうし。どこに居るかも分からない人ひとりを探し出すのは無理じゃない?」

「確かに難しいとは思う。だからある程度探してみて見付からなかったら、アランが調べてくれた隣国の貴族の所に向かうつもりだ」

「なるほど...それならまだマシね...分かったわ。許可してあげる」

「アンリエット! ありがとう! 恩に着る!」

「まずはアランに隣国の貴族のことを詳しく聞いてらっしゃい」

「いいのか? 怪我してるんじゃ?」

「そのくらいなら大丈夫よ」

「分かった! 行って来る!」

 ウィリアムが出て行った後、私はハンスを呼んで、

「ハンス、聞いてた通りよ。ウィリアムの旅支度を手伝ってあげて? お金もある程度工面してあげて?」

「お嬢様...本当によろしいのですか...」

「いいのよ。ウィリアムの目は真剣だったわ。途中で投げ出したりなんかしないでしょう」

「しかし...」

「もしそうなったらそうなったで、私に人を見る目がなかったっていうだけの話だわ。そうでしょう?」

「本当に...お嬢様はお人が好い...」

「あぁ、言われなくてもお人好しだっていう自覚はあるわよ」

 私は苦笑するしかなかった。

 ともあれ、これでパトリック一家...いやウィリアム一家というべきかな...の問題が解決するなら安いもんだと思っていた。


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