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「それじゃあ、アンリエット。私はそろそろ失礼するわね」

 処置室から出た後、エリザベートがそう言って来た。

「えっ!? もう帰っちゃうの!?」

 こんな何もかもが中途半端な状態で!? 私の心がまだ事態を上手く受け入れられていないってのに!?

「あんまり長いこと家を空けている訳にもいかないしね」

「確かにそうよね...」

 私は渋々頷くしかなかった。

「アンリエット、あなたには色々と迷惑ばっかり掛けて本当にごめんなさいね。正式なお詫びの品は後日贈るから少し待っててね?」

「あぁ、うん...別にそんなことはどうだっていいんだけど...」

 それよりもアランと二人っ切りにして欲しくないんだけど...非常に気不味いんですけど...この気持ち一体どうしたらいいのさ...

「そういう訳にはいかないわよ。これだけ迷惑掛けたんだから。なにか贈らせてちょうだいな。そうじゃないと私の気持ちが収まらないわ。遠慮なく受け取ってちょうだい。あぁ、そうそう。もちろん、アランの件は別腹よん♪」

「うぐ...」

 こ、この野郎! 分かってて揶揄ってやがんな! ホント質の悪いヤツだ!

「アランとしっかり話し合いなさい。逃げないでね」

「分かってるわよ...」

 クソッ! 最後にカッコ良いセリフで締めやがってからに! ムカつく! 悔しいが私はなにも言えなくなってしまった...


◇◇◇


「あの...アンリエット...」

 客間に戻ろうとした時、ウィリアムがおずおずといった感じで話し掛けて来た。

「あぁ、ウィリアム。騒がしくて悪かったわね」

「いや、それは別にいいんだけど...結局どうなったのかなって...」

「安心して。ケリが付いたから。もう外に出ても平気よ」

「そうか...それは良かった...マックスのヤツがね、お外に出たいって駄々こねちゃっててね...」

「あぁ、そうよね。子供は外で遊びたいわよね。いつまでも家の中に閉じ込めてたら退屈しちゃうわよね。もう大丈夫だから、思いっ切り外で遊ばせてあげて」

「分かった。ありがとう。そうさせて貰うよ。それとその...例の件なんだけど...」

「あぁ、うん...それね...ごめんなさい、そっちはちょっと時間掛かりそうなのよ...アランがちょっと怪我しちゃってね...」

 私は歯切れ悪くそう言った。

「そうなんだ...大丈夫なのかい?」

「えぇ、大怪我って訳じゃないから大丈夫よ。ただちょっと、もう少し回復するまでの時間をちょうだい」

「分かった...色々と無理言って済まない...」

「気にしないで」


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