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173 (第三者視点5)

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 一方その頃。

 アランは地下室で自分を縛めているロープと格闘していた。

「クソッ! ご丁寧にかなり固く結んでいやがるな!」

 全体重を掛けて壁に擦り付けているが、ロープはびくともしない。アランは段々焦って来た。このままではアンリエットの身に危険が及んでしまうかも知れない。一刻も早く逃げ出したいのに儘ならない。

「クソッ! クソッ! さっさと解けろよ! 俺はこんな所にいつまで居る訳にはいかないんだ! 早くお嬢の側に帰らないと!」

 そんなこんなでアランが悪戦苦闘していた時、なにやら階上が騒がしくなって来た。

「なんだ!?」

 ロープを擦り付けている手を止め、アランは階上の気配を探った。その時だった。

「おい! アラン! 助けに来たぞ! どこだ!? どこに居る!?」

 カイルの声だった。

「カイルか!? 俺はここだ! ここに居るぞ! 早く! 早く助けてくれ!」

 アランは声の限りに叫んだ。


◇◇◇


 同時刻。エリザベートという名の修羅から命からがら逃げ出したクリフトファーは、馬を飛ばしてアジトを目指していた。

「クソッ! クソッ! 仕切り直しだ! 舐めやがって! 見てろ! 思い知らせてやる! あの野郎をもっともっと甚振ってやった後、指を一本切り落として送り付けてやるぞ! 今更後悔しても遅いんだからな!」

 完全に逝っちゃった目でそんなことを叫びながら馬を駆るクリフトファーの姿は、妹に劣らず修羅と化していた。

 やがてアジトに辿り着いたクリフトファーは、

「おい! お前らどこに行った!? なにをサボってやがる!」

 足音荒く室内に入って、雇った破落戸の姿が無いことに気付き激昂した。

「おい! なにをやってる!? どこに居るんだ!?」

 クリフトファーは室内を歩き回り声を掛けるがどこからも返事は無い。その時だった。

「探してんのはコイツらかい?」

 地下室に通じるドアを開けて、怒り心頭に発したアランが破落戸の一人を投げ付ける。破落戸は見る影もなくボコボコにされていた。

「ぬなあっ!? お、お前、な、なんで抜け出て」

 来てやがんだ! と続けたかったクリフトファーは、その先を言葉にすることは叶わなかった。

 アランの怒りの拳がクリフトファーをクリーンヒットしたからだ。

「くべえっ!」

 吹っ飛んだクリフトファーは壁に激突してひっくり返った。

「おいおい、お坊っちゃん。まだお寝んねするには早いぜぇ! 10倍いや100倍返しにするって決めたんだからよぉ! 覚悟しろやぁ! こんのクソ野郎がぁ!」

 そう叫んでアランは凄惨に嗤ったのだった。
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